第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
バラの花束でも持ってこられたならともかく。
それはシロツメクサでもなんでも、お花を2人がくれたのは嬉しかったけれど……でもあれはプロポーズとか言い寄るとかそんなんじゃなくて。
子供の頃の記憶を辿るように、懐かしい思い出に触れる、そんな雰囲気だったから。
「告白とかなかったの?」
「ないですよ! 大体そういう雰囲気じゃなかったんですってば!」
「ふぅーん。夜久くんなら昨日あたり攻めるかと思ったのになぁ」
雀田さんはおかしいな、と言いながら首をひねった。
「あれじゃない~? 東峰くんのガードが意外と堅かったんじゃない?」
「雪絵、それだわ、きっと。夜久くんは烏野エースのブロックに阻まれたんだわ」
「…もう、雀田さんも白福さんも好き勝手言わないでくださいよ」
「ごめんごめん」
雀田さん達のからかいはそこで終わった。
終わったけれど、私の頭の中は昨夜のことでいっぱいになっていた。
木兎さんが言ってたってことは、木兎さんは昨日の夜3人でいたところを見ているってことだ。
……一体いつから見ていたんだろう。
衛輔くんが来る前から、私が、旭先輩に慰めてもらっている時から見られていたとしたら。
木兎さんの他にも見ていた人がいるとしたら。
あの時はお母さんのことで頭がいっぱいで、周囲の様子とかそんなの全部吹っ飛んでいたとはいえ、誰が見てるか分からない状況で、旭先輩に抱き着いてしまってた。
事情を知らない他の人からしたら、私と旭先輩の仲を誤解してしまうだろう。
武田先生にも、学校の代表として相応しい行動を、って言われたばかりだったのに。
木兎さんの話がどこまで広がってしまったのか分からないけれど……声の大きな木兎さんのことだから、この話はあちこちに飛んでしまっているような気がする。
この時間まで誰かに何か言われたわけではないけれど……。
バーべーキューの時はなるだけ目立たないようにしようと、私は心に誓ったのだった。