第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
「バーベキュー終わったら、お別れだね。せっかく仲良くなれたのに寂しいな」
「また来月会えるんじゃない?」
「でも次は土日だけでしょ。会えてもすぐお別れだもん」
雀田さん達の会話を聞きながら、マネージャー総出でバーベキューの準備を行った。
山のように盛られた野菜や、大量に並んだおにぎりを眺めて、どこか寂しい気持ちが込み上げてきた。
握っても握ってもまだあるご飯にどこかうんざりしているはずなのに、合宿が終わってしまうのは寂しかった。
合同合宿は、まだあと数回あるらしい。
けれど今回のように1週間もある合宿はもうない。
ライバルだけれど、ともに1週間濃い時間を過ごした他校の人達と離れるのは、雀田さんと同じように私も寂しいと思った。
「あーあ、今年も部活だけで夏が終わりそう」
「それ去年も言ってなかったっけ」
「言ってた言ってた」
「ここにいる皆大体そうでしょ」
「……いやいや、そういや1人そうじゃない人がいるじゃないですか」
ふとそこで会話が途切れて、視線を感じて顔をあげると、雀田さん達がにやにやした顔で私を見ていた。
「えっ」
「えっ、じゃないでしょ美咲ちゃん。聞いたよぉ昨日の夜のこと」
「プロポーズされたんだって?」
「プロポーズ?!何の話ですか?!」
驚く私に、雀田さん達は「またまた~。隠さなくてもいいのに」と言ってにまっと笑った。
昨日の夜のこと、といえば多分、衛輔くんと旭先輩と一緒にいた時のことだろうけれど。
プロポーズされた覚えはない。
ただ2人ともシロツメクサで作った花冠だとか指輪だとかを、なぜかたくさん渡してくれただけで……。
「木兎が言ってたよ。夜久くんと東峰くんが美咲ちゃんにプロポーズしてたって」
「いいなぁ~同時に2人に言い寄られるってドラマみたい~」
「言い寄られてないですって! 木兎さんが適当に言ってるだけですよ」
「そうなの? でも2人して美咲ちゃんにお花を贈ってたって」
「それは……なんというか、子供の頃の遊びの延長みたいなもので……」
プロポーズとかそんな感じじゃなかったはず。
昨夜のことを思い浮かべても、2人ともそんな雰囲気じゃなかったと思う。
「でもさぁ、なんとも思ってない子にお花あげたりする?ふつう」
「お花っていっても、シロツメクサですし……」