第41章 心模様
「東峰さんがこうなったの、ウチのせいです。申し訳ない」
「どういう事?」
菅原達の視線が一気に赤葦に集中する。
赤葦は身じろぎ一つせずに、昨夜の出来事を順序よく説明し始めた。
夜中に部屋を抜け出して木兎と2人で幽霊探しをしていたこと。
その途中でトイレに起きた東峰と出会ったこと。
木兎が東峰を言いくるめて幽霊探しに付き合わせたこと。
そして、女子マネのいる階に到達した際、東峰とはぐれてしまったこと。
「ーー……はぐれた後、東峰さんがどうしていたのかはハッキリとは分かりません。ただ、見回りをしていたーー烏野の顧問の先生が空き教室に入ってしばらく出てこなかったところを見ると、多分そこで東峰さんは先生に見つかったんじゃないかと思います」
「そっか…詳しく話してくれてありがとう、赤葦。旭が夜中そんなことしてたなんてなぁ……マジでアルミ缶くらいにはなったかもなぁ……」
菅原の言う“アルミ缶”が何の事なのか、黒尾達にはさっぱりだった。
「つかマジで幽霊探しに行ってたのかよ。その上女子マネの部屋のとこまで行くとか……むしろそっちがメインだったんじゃねぇの?」
やらしー、と夜久が冷ややかな目で木兎を見やると、分かりやすいくらいに憤慨した顔を木兎は見せた。
「違う! あれはフカコーリョクってやつでだなぁ」
「不可抗力なんて難しい言葉よく知ってたなぁ、木兎」
馬鹿にしないで下さい、と木兎がぷぅっとふくれっ面になる。
「木兎と赤葦は先生に見つからなかったのか?」
「…えぇ、まぁ……」
夜久の問いかけに、赤葦が答えたものの、妙に歯切れの悪い返事だった。
「なんだ木兎。お前、東峰を人身御供に差し出して逃げたのかよ」
「んな訳ないだろ! 俺らも先生に叱られに行こうとしたさ。けど……」
「けど?」
一体どんな言い訳が飛び出すのやら。
ニヤニヤしながら木兎の言葉を待っていた黒尾だったが、木兎はなかなか口を開こうとしない。
「けど、何なんだよ。勿体ぶってねぇで話せよ」
「……東峰くんが階段降りてくのが見えたから、追っかけていったんだ。そしたら......ソイツは東峰くんじゃなくて、落ち武者だったんだ!!」
「あーハイハイ、そういうアレね」
「マジで! これマジなんだってば!! な、赤葦! 赤葦も一緒に見たよな」
「はい。見ました」
冗談にしては、赤葦の顔は真剣だった。