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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第40章 落ち武者は薄の穂にも怖ず


「行くぞ、赤葦、東峰くん!」

いつの間にかちゃっかり頭数に入れられていることを知り、東峰の顔が引きつった。

「ええっ?! いや俺は行かないよ?!」
「何っ? …ははーん。もしかして東峰くん、怖がりだな」
「えっ」

烏野の人間には東峰の性格は知れ渡っていたが、他校の人間には東峰のことを深く知っているものはほとんどいない。
だから木兎に怖がりであることを指摘されて、東峰は途端に恥ずかしくなってしまった。

ワイルドを目指して外見を整えている東峰にとって、ワイルドで無いことを他人に知られるのは何よりも恥ずかしかった。
ならばそれに見合う中身になればいいのに、と菅原あたりは言いそうだ。

自分の考えが図星だと気付いた木兎は、意地悪な笑みを浮かべてこう言った。

「そうかー。部屋まで1人で戻るの、心細くないならいいけど。まぁ部屋までそう遠くないし? ユーレーなんていないって思ってるなら、怖くもないかぁー」
「えっ…」

木兎の言葉に赤葦は驚きを隠せなかった。
あの木兎さんが。単細胞エースの木兎さんが。

黒尾さんのように言葉で人を操ろうとしているーー?!

普段ならあり得ない事態に、赤葦は木兎を止めるのを忘れてしまっていた。
助けを得られなかった東峰は、困った顔で赤葦と木兎の顔をちらちらと眺める。

少しの間悩んで、東峰はゆっくり口を開いた。

「い、一緒に行くよ…」
「おーし! そうこなくっちゃ!!」

赤葦が呆然としている間に、話はまとまった。
赤葦も東峰も部屋に戻りたかったものの、木兎の勢いに押されて2人とも木兎の後をついていくしかなかった。

「……なんで皆、こういうの好きなんだろう。肝試しとか、怪談とか」
「夏、だからですかね…木兎さんは、単に面白いことが好きなだけだと思いますけど」

木兎の後ろ姿に向けて、赤葦が言う。
確かに軽やかな足取りで歩いていく木兎の姿は、この肝試しを心から楽しんでいるように見える。

「面白い、かなぁ……あぁでもスガも同じようなこと言ってたな…」
「…スガ…」
「あ、セッターの菅原な。うちの副主将」

ああ、と赤葦が納得した顔を見せる。

「けど意外ですね。菅原さんがこういうの面白がるなんて」
「そう? あいつも今日の夜肝試しするんだって息巻いてたんだけどなぁ…」
「へぇ…そうだったんですか」
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