第5章 買い出しに行こう
旭先輩が慌てて先ほどまでいた陳列棚の元へ向かった。
その後に私も続く。
カートは先ほどの位置のまま、静かに私達の帰りを待っていた。
二人してそれぞれのカートを押して、レジへと向かう。
レジ付近の陳列棚で、潔子先輩が見るともなしに商品を眺めている。
会計はまとめてする予定だったから、潔子先輩はずっとここで私達が来るのを待っていたのだろう。
ちょっと申し訳なく思った。
「お待たせしました!」
「ああ、うん。何かあった?」
「迷子の子がいまして」
「…あぁ、東峰が泣かせたのね。美咲ちゃんフォローありがとう」
「えっ、清水なんで分かるの?!」
潔子先輩のエスパー並みの発言に旭先輩は怯えていた。
まるで先ほどの光景を見ていたかのような先輩の発言には、私もちょっと驚いた。
「東峰、後輩の子もよくビビらせてるから。子供だったら余計そうだろうなって。さっき泣き声も聞こえてたし」
「うっ…」
ぐうの音も出ない旭先輩をよそに、潔子先輩はレジへと向かう。
肩を落としてしょんぼりしている旭先輩を励ましながら、私達も潔子先輩の後に続いた。
会計を済ませて、買った物を武田先生の車へ積み込む。
大量にあった荷物も、武田先生自慢の大容量トランクにすっかり収まった。
「では再度学校に戻りますね」
「よろしくお願いします」
再び武田先生の車に乗り込み、私達は元来た道を戻り、静けさの増した学校へと戻ってきた。
「おお…さすがに暗いな……」
合宿用の食材や荷物を保管場所へと運ぶ道中、旭先輩は暗がりの中きょろきょろしながら歩みを進めている。
ガラスのハートだの小心者だの、他の部員から散々な言われようの旭先輩だけれど、この様子を見たらそれもなるほどと言わざるを得ない気がしてくる。
大きな体が縮こまって、微かに震えているように見える。
これは後ろからいきなり「わっ」とか言って驚かしたら、きっとものすごくびっくりして飛び上がるに違いない。
想像して、ちょっとおかしくなる。
実際にはそんな意地悪なことはしないけれど、暗闇を怖がる旭先輩の姿も可愛いなぁなんてこっそり思う。
私はギャップに弱いのだろうか……。
「夜の学校って、ちょっと不気味な感じしますよね」
「…なんでだろうな…昼はそんな感じしないのになぁ……」
「暗いからじゃない?」