第39章 合宿3日目
自分の気持ちに振り回されて、体調管理もできずに倒れてしまうような私より、適任な人はもっと他にいる。
私がここにいていい理由なんて、あるのだろうか。
自分の足下が揺らぎ出す。
厄介だ。
大事な仲間だって言ってくれた先輩が、そばにいてくれるというのに。
私の根っこはいつまでたっても、ぐらつく弱く細い根だ。
「どうした黒崎、難しい顔をして」
「えっ」
澤村先輩の指摘に目を丸くすると、旭先輩が自分の眉間を指差した。
「眉間に皺が寄ってる。体しんどい? それとも何か悩み事?」
「あ、いえ…」
大丈夫です、と口にしそうになったけれど言葉を飲み込んだ。
また、嘘をつくのか。
嘘をつくくらいなら、始めからそんな顔を見せなければいいだけの話だ。
かと言って、自分がここにいてもいいのか自信が無いんです、と正直に打ち明けるのも憚られる。
皆が必死で頑張っている横で、1人うじうじ悩んでいるの、自分でも情け無いと思うし。
支える側のマネージャーが、部員に頼るような真似をするのもどうかと思うし。
答えに詰まる私を、先輩達は急かさなかった。
私が話せるようになるまで待つよ。そんな先輩達の気持ちが伝わってきた。
「あっ、田中。あれ放っておいていいのか」
急に澤村先輩が声を上げて遠くを指差した。
そこにはゴミ袋を持ってスイカの皮を回収している潔子先輩と、先輩に何か話しかけようとしている梟谷の部員の姿があった。
「ハッ?!潔子さんが危ない!」
言って田中先輩はスイカの皮片手に走って行った。
「おい、暴走するなよー。…聞こえてないな。仕方ない、近くで見張るか」
澤村先輩が腰を上げて、田中先輩の後を追っかけていく。
残された私と旭先輩は顔を見合わせる。
澤村先輩、2人で話せるように気を遣ってくれたのかもしれない。
途中から棒読みのセリフめいていたから。
「……何か、また1人で思い詰めてるだろ黒崎。そういう時は抱え込むんじゃなくて、どんどん頼るんだよ周りに」
ぽんぽんと旭先輩が地面を軽く叩く。隣に座るように促しているのだろう。
黙って促されるまま、先輩の横に腰を下ろした。
足元にはシロツメクサの花が広がっている。
夏にまだこんなにシロツメクサの花が咲いているのは珍しいような気がする。
暑さに負けず元気に生い茂っているシロツメクサを指先で撫でた。