第38章 合宿1日目夜~2日目
「でもあんな風に介抱されたら、ちょっとクラッとこない? 幼馴染みとはいえさ」
「えっ…うーん……」
「あらら、これは夜久君望み薄だわ…」
答えに困ってしまった美咲ちゃんを見て、雀田さん達は「夜久君可哀想に」と眉を下げて肩をすくめていた。
「えーじゃあ黒崎さんってどんなタイプの人が好きなの?」
宮ノ下さんが尋ねると、美咲ちゃんはまた言葉に詰まっていた。
「タイプ、ですか……」
美咲ちゃんの好きなタイプってどんな人なんだろう。
夜久さんじゃないんだとしたら。
もし、東峰さんみたいな人がタイプだったら。
両思いだったらいいのになぁ、なんて勝手に思ってしまう。
星を見上げて寂しそうな顔をしていた東峰さんを見たからだろうか、私は夜久さんより東峰さんに肩入れしてしまっていた。
宮ノ下さんの質問に美咲ちゃんは少し考え込んでしまった。
助け船を出すように宮ノ下さんが質問を重ねる。
「んー…じゃあ、烏野の人達の中でだったら誰がタイプ?」
「っ、か、烏野で、ですか?」
誰から見ても美咲ちゃんが動揺しているのは丸わかりだった。
裏返った声が、さらにそう思わせる。
「あらら? その動揺の仕方は、もしかして?」
雀田さんが怖いくらいの笑顔になった。
「烏野に、好きな人がいるのかな~?」
白福さんの追撃に、美咲ちゃんの頬が赤く染まっていった。
だけど美咲ちゃんは必死に首を振って否定する。
あれ、もしかして、もしかすると。
美咲ちゃんの好きな人って。
「いませんよ?!」
「やだ、隠さなくていいよ。大丈夫、言い触らしたりしないから。…で、誰だれ?」
笑顔のまま、雀田さん達が美咲ちゃんににじり寄っていく。
壁際まで追い詰められた美咲ちゃんだったけれど、ずっと首を振るばかりだった。
「むー、じゃあ当ててみせよう! うーん、そうだなぁ……同じ1年生の眼鏡の子!」
「いや、だから、」
「あー違うか。…じゃあ、キャプテン!」
「あの、」
「キャプテンでも無い、か。じゃあ……」
雀田さん達は烏野の部員を1人ずつ挙げていく。
数打ちゃ当たる戦法で次々と部員の名が挙がるものの、美咲ちゃんはうんともすんとも言わなかった。