第38章 合宿1日目夜~2日目
予想だにしていなかった質問に、私の目はまん丸になった。
夜久さんが美咲ちゃんの彼氏?
でも言われてみれば、倒れた時からずっと美咲ちゃんのことを心配して動いてた。
誰よりも真っ先に手当てを始めて、その後の経過も私達より先に知ってた。
むしろ夜久さんから教えてもらったくらいで。
夜久さんと美咲ちゃんは知り合いみたいだったけれど、まさか彼氏彼女の仲だったのかな?!
「いえ…衛輔くんはそういうんじゃ……」
「そうなの? 昨日の様子見てたらただの知り合いには見えなかったけど…」
否定する美咲ちゃんだったけれど、雀田さんの言うように、あの夜久さんを見ていたら私もただの『知り合い』には思えない。
前の合宿で、夜久さんと東峰さんが美咲ちゃんのこと好きだってことは、偶然知ってしまったけれど。
いつの間にか夜久さんと付き合うようになったのかな。
今度会ったら告白する、みたいなことを夜久さんは言っていたような気がするから……。
「私も2人は付き合ってるんだと思ってた。練習始まる前から仲良さげに話してたし」
生川高校の宮ノ下さんの言葉に、雀田さんが相槌を打つ。
「ああ、そうそう! 英里ちゃんも思ったよね? 夜久君、絶対黒崎さんのこと意識してると思うけどなぁ」
「お互い名前で呼んでるしね~」
雀田さんの言葉に重ねて、白福さんも興味津々といった顔で話に加わった。
修学旅行みたいなノリで、恋バナが始まるのはこの年頃の常なのだろうか。
皆美咲ちゃんの言葉を今か今かと待っていた。
私もちょっと気になってしまっている。
「衛輔くんとは幼馴染みで……家族みたいな関係なんです」
美咲ちゃんがそう言うと、雀田さん達は顔を見合わせた。
何か目で会話し合って、また美咲ちゃんの方に向き直る。
「……そうなんだ。ごめんね、変なこと聞いて! あんまり夜久君が必死だったからさ。幼馴染みとは知らなかったし、てっきり付き合ってるんだとばっかり」
確かに他校のマネージャーをあんなに必死に介抱する姿は、他人から見たら不思議に思えても仕方ないと思う。
倒れた人を心配するのは何もおかしなことじゃない。
だけど夜久さんの心配の仕方は尋常じゃ無かった。
2人の間に何かがあることに、皆気が付いていたと思う。