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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第38章 合宿1日目夜~2日目


「私は特に何もしてないよ」

言ってにっこりと潔子先輩は微笑んだ。
心が軽くなった私も、先輩に微笑み返す。

「今は、目の前のこと精一杯頑張ります! せっかくの遠征合宿だし、貪欲に行かないと」
「ふふ。なんだかやる気出てきたみたいだね」
「はい! 春高目指して、私もやれることめいっぱい取り組みます」
「うん……う、ん?」

潔子先輩は頷きつつも、次第に困った顔になっていた。

「あれ、私何か変なこと言いましたか?」
「ううん。言ってない。だけど……東峰のことは、いいの?」
「…春高が終わるまでは、私もバレーに専念しようと思って。今日みたいに、皆に迷惑をかけたくないですし」

旭先輩のことは好き。
だけどその気持ちに振り回されて、大事なことを見失っちゃいけない。

旭先輩のそばにいたいから戻ってきたのも本当。
だけどそれだけじゃない。
大好きな先輩の願いを叶える手伝いをしたい。

旭先輩の勇姿をオレンジコートで応援する。
その為に、私はここへ戻ってきたのだから。

「そっか。私はいつでも美咲ちゃんの味方だから。…おせっかいは控えめにするけど、何かあったら遠慮無く言ってね。協力は惜しまないから」
「ありがとうございます」

心強い味方もいる。
何も迷う事なんてなかったんだ。

私は1人晴れやかな気持ちで、その日1日を終えた。


******

翌日。
まだ少し体のだるさはあったものの、やる気に溢れていた私は朝から動く気満々だった。

だけど昨日のことがあったから、武田先生から『今日も1日安静にしているように』とのお達しが下った。
支度を済ませた他のマネージャー達と部屋を一緒に出たものの、私は一人列を抜けて保健室へと向かった。

やる気はあるのに動けないのはつらい。
けれど我が儘言ってまた無理をして、皆に迷惑をかけるわけにはいかない。

私は大人しくベッドに横になった。

保健室はしんと静かで、窓は閉めてあるのにバレー部員達の声が聞こえた。
することが無くてぼうっと天井を見つめていたけれど、時折聞こえる「ナイスキー!」だとか「もう一本!」という声に、体はうずうずしていた。

うちのチームは勝ったのかな。
新しい攻撃はかみ合うようになってるかな。
怪我とかしてないかな。
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