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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第37章 交錯する心


じっと私を見つめる衛輔くんの目が、少し怖い。
私の心の奥を見透かそうとするような鋭い眼差しだった。

怒っているのとはまた違うけれど、いつもの優しいおにいちゃんとも違う。
見たことの無い衛輔くんの真剣な表情に息を飲んだ。

「美咲ちゃん。俺は、」

衛輔くんが何か言いかけた時、ガラガラと扉の開く音がした。
二人して音のした方へ目をやると、旭先輩の姿がそこにあった。

「ごめん、邪魔したかな」

申し訳なさそうに後頭部を掻きながら旭先輩がそう言うと、一瞬の間があって衛輔くんが小さく「いや、別に」と答えた。

「黒崎、体調はどう?」
「もう大丈夫です。一日寝てたから…。ごめんなさい、マネージャーなのに体調崩して皆さんにご迷惑をおかけして」
「迷惑とかそんなの全然。それより体調が戻って良かったよ」

旭先輩の顔をしっかり見たの、久しぶりな気がする。
立派な眉が緩やかに下がって、優しげな瞳がこちらを見ている。
色々あって先輩の顔を見ると胸がツキンと痛むけれど、こうやって心配してきてくれたことは素直に嬉しいと思えた。

「…なぁ東峰、いつまでもそんなとこに突っ立ってないでこっち来いよ。美咲ちゃんさっき起きたとこだぜ。あんまりデカイ声出させんなよ」
「あっ、うん、ごめん」

衛輔くんに促されて、旭先輩がベッドのそばまで来てくれた。
衛輔くんがパイプ椅子を自分の横に並べて、旭先輩にそこへ座るよう促す。
すすめられるがまま、旭先輩は腰を下ろした。

「ありがとう、夜久」
「お前のためじゃねぇよ? 美咲ちゃんがしんどくならない為に、だからな」
「うん。そうやって黒崎の事大事にしてくれてありがとう」
「なんだよそれ。変なヤツだな、お前。まるで美咲ちゃんの保護者みたいな言い方だな」
「黒崎は大事な人だから」

旭先輩の言葉に、ドキリとした。
『大事な人』の意味が、私の想像する意味とイコールだとしたら。
また都合の良いように思考回路が巡っているのだと分かっていても、胸はどくんどくんと高鳴っていく。

「……そりゃあ、大事なマネージャーだろうけどよ」

衛輔くんがどこか不満げな顔で呟く。
喧嘩ではないのだけれど、どこか不穏な空気が衛輔くんと旭先輩の間に漂っているような気がする。

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