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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第37章 交錯する心


「…美咲ちゃん、すっかり綺麗になっちゃってさ。小さい頃の面影は残ってるけど、俺の知らない美咲ちゃんになっちゃった感じが、ずっとしててさ。長い間会ってなかったから、そりゃ当然っちゃ当然なんだけどな。…でも、やっぱり根っこの部分は変わんねぇんだなぁって。なんか、安心した。…倒れてしんどい思いした美咲ちゃんに、こんなこと言うのおかしいかもしれねぇけど…」

衛輔くんは、そう言ったけれど。
それは私も同じだった。

数年ぶりに出会った衛輔くんは、すっかり男の人になっていて。
小さな頃はあまり変わらなかった背丈も、小さかった手の平も、今ではすっかり大きくなっている。

見た目は変わってしまっても、衛輔くんも根っこの部分は変わっていない。
昔と変わらず、心配性で、私を守ってくれる、優しい『やくのおにいちゃん』のままだ。

「衛輔くんも、変わらないよ。…今日はたくさん心配させて、迷惑かけてしまって、ごめんなさい。」
「だから迷惑なんて思ってねぇって。心配は、したけど。……回復して良かった」

衛輔くんの温かな手のひらが、私の頭を優しく撫でた。
幼い頃もこうやって撫でてもらった記憶が蘇り、変わらず優しいおにいちゃんの姿に、じんわりと心が温かくなる。

「そばにいてくれてありがとう、おにいちゃん」

ぽろりと、こぼれた言葉だった。
それがどんな風に衛輔くんに受け止められるかとか、何も考えていなかった。

それまで微笑みを浮かべていた衛輔くんの表情がさぁっと固くなっていった。
温かさが宿っていた瞳も、今はどこか寂しそうな色味を帯びている。
何か気に障ることを口にしてしまったのだろうか。

私がその答えを見つける前に、衛輔くんが小さな溜息とともに私に尋ねてきた。

「美咲ちゃんにとって俺はいつまでも『やくのおにいちゃん』なのか?」

どういう意味だろう。
衛輔くんの口ぶりは、まるで『やくのおにいちゃん』であることが嫌みたいな口ぶりだ。

もうお互い高校生だし、『おにいちゃん』なんて子供っぽい呼び方をされるのが嫌なのだろうか。
いつまでも甘えてばかりの私に嫌気がさしているのだろうか。

真意が掴めず、何と答えて良いのか分からないでいると、衛輔くんの顔がぐっと近づいてきた。

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