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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第37章 交錯する心



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目を開けた時には、すでに外は暗くなっていた。
どのくらい眠っていたのだろう。

ほぼ白で埋め尽くされた部屋は、しんと静かだった。

練習中に衛輔くんが心配そうな顔をして私を見ていたのは覚えている。
冷たい衛輔くんの手の感触がいまだ額に残っているようだ。

ふと、手にぬくもりを感じて、天井へ向けていた視線をベッドの脇へと移動させる。
ぱちりと目が合った人物は、心配そうな顔でじっと私を見つめていた。

「気分はどう? 美咲ちゃん」
「うん、だいぶ良くなったよ。ありがとう、衛輔くん」

椅子に腰かけたまま、衛輔くんがぎゅっと私の手を握る。
ずいぶん心配をかけてしまった。
いつから傍にいてくれたのだろう。
ここにいるのは私と衛輔くんだけのようで、他に人の気配は無い。

「衛輔くん、練習は?」
「ん、もう終わったよ。自主練やってるやつもいるけど」

もう全体練習は終わってしまったようだ。
今日一日、私はほとんど寝ていたらしい。
…私、何しに合宿に来たんだろう。

「…衛輔くんも自主練行って来て。もう、大丈夫だから。迷惑かけてごめんね」
「気にすんなよ。てか、迷惑とか思ってねぇし。それより本当に大丈夫か? 顔色はだいぶ良くなったと思うけど…気分悪かったりしないか?」
「うん、もう平気だよ」
「…本当に、無理すんなよ。昔もそうやって無理してさ。きついのに我慢して頑張っちゃうとこ、変わってねぇよな美咲ちゃん」

衛輔くんが困った顔で笑う。
幼い頃も、寝ている私の傍で衛輔くんが心配そうに顔を覗き込んでいたっけ。
熱を出すたびに、りんごをすりおろして持ってきてくれたり、氷枕を用意してくれたり。あの頃から変わらず、私は衛輔くんに心配をかけてばかりだ。

「成長してないね、私……」
「責めてるワケじゃねぇよ。…逆に俺、ホッとしたよ」
「…?」

衛輔くんの発言の意図が分からず首をかしげていると、少し気恥ずかしそうに衛輔くんが言葉を続けた。

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