第37章 交錯する心
「全部計算して動いてるってことだよ。旭と確実にヨリ戻せるように、色々考えて行動してんじゃん。美咲ちゃんの前でヨリ戻そうって言ったのも、牽制だろ。前の旭だったら多分押されてヨリ戻してただろうな」
「そんなに俺って流されやすそうに見える?」
「普段の旭見てたらな。愛梨さんと付き合ったのも向こうに告白されたからだろ? そりゃ愛梨さんにしてみれば、今回も押せ押せでいけばなんとかなるって思うべ」
「そうか・・・」
優柔不断なところは確かにある。
波風立てるの好きじゃないから、自分の意見をハッキリ言うことも少ない。
こと恋愛においてはその傾向が強いかもしれない。
「でもさ。今はちゃんと、自分の意思で『好き』なんだろ?」
「うん」
「夜久に取られたくないんだろ?」
「・・・うん」
それ以上聞かなくても、スガが言おうとしていることは分かった。
今自分が何をすべきなのか、道筋はスガがつけてくれた。
あとは、俺が一歩踏み出すだけだ。
「ごめんスガ。ちょっと行ってくる」
「おう。行ってこい!」
心を決めた俺は、ボールをスガに手渡して体育館を足早に出た。
まず最初に何と言葉をかけようか。
頭の中で幾つものシミュレーションをしながら、黒崎と夜久のいる保健室へと向かった。