• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第1章 一枚のビラ


「えっ、あっ…」

ノーとも言えず、イエスとも言えず、言葉につまる私に清水先輩は優しく微笑んだ。

「いきなりマネージャーってのもあれだろうから、よかったら見学にきて?毎日放課後、体育館で活動してるから」

美しい笑顔とともに、白魚のような手からビラを一枚手渡される。
はぁ、となんとも微妙な返事をしながら私はそのビラを受け取った。

『男子バレー部マネージャー募集!』

太字で大きく書かれた文字がいやでも目に入る。
男子バレー部、ってどんな感じだったっけ。
入学してすぐの部活紹介で目にしたけれど、あまり印象には残っていない。
もともと部活動をする気がなかったから、他の部活だってあまりよく覚えていないけれど。

「私、3年の清水潔子です。えっと、」

「…あっ、わ、私は黒崎美咲です」

「よろしくね、黒崎さん。じゃあ放課後に。よかったら今日来てもらってもいいからね」

「あ、はい…」

清水先輩は去って行く後ろ姿も美しかった。
ドラマや漫画だったら、キラキラの効果がはいっているところだろう。

「いいなぁ美人マネージャー…」

「うちの部にも欲しい…」

はぁ、と深いため息をつく男子生徒達。
彼らとは違った意味で、私も深いため息をつく。

「あのさぁ、なんでかマネージャーやることになってるんだけど」

恨めしそうな目で件のクラスメイトを見つめる。
しかし即座に彼女は正論をぶつけてきた。

「嫌なら断ったらいいじゃん?」

「いや、あの感じで断れないでしょ…フツー」

「すっごい目輝かせてたもんね、清水先輩。でもいいじゃん、部活・青春・美人な先輩!ザ・高校生って感じするじゃん」

「私は平穏無事に過ごしたかったんだけど…」

「んもう、だから嫌なら断れば?」

「……」

これ以上問答しても何も変わらない気がして、私はそこで言葉を紡ぐのをやめた。
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp