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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第35章 先輩の気持ち


『…? もしもし? 美咲ちゃん?? もしもーし!!』

携帯から大きな声が聞こえてきて、そこでようやく私は旭先輩から衛輔くんの方へ意識を戻した。
旭先輩にも衛輔くんの声が聞こえたようで、向こうを向いていた旭先輩が何事かとこちらに顔を向ける。

「ごめん、ちょっとぼうっとしてた」
『んー? 大丈夫か? 疲れてる?』
「ううん、大丈夫だよ……」
『……なぁ、東峰、横にいるんだよな』
「えっ? う、うん。いるよ」

衛輔くんの言葉に、私の目は旭先輩へと自然と向いていった。
目が合った旭先輩は「何かあった?」というような顔で私を見ている。

『美咲ちゃん、やっぱ東峰に気遣うよな。東峰の携帯借りてこうやって話すのはさ』
「…う、うん。正直、そうかな」

見上げた旭先輩の顔はいまだ不思議そうな顔のままだ。
私と衛輔くんがどうやら自分の事を話しているとは思っているみたいだけれど、内容までは聞こえていないみたい。

『じゃあさ、俺が携帯買って送るからさ。それでやり取りしようぜ』
「それは悪いよ。……携帯の事は、家族と相談してみる」

衛輔くんの申し出は嬉しいけれど。
流石に携帯を買ってもらうというのは気が引ける。
いくら衛輔くんが昔家族同然だったとはいえ、私と衛輔くんはただの幼馴染だ。

『俺は別に構わないんだけどなぁ』
「気持ちは嬉しいけど……やっぱりそこまでしてもらうのは悪いよ」
『そうかぁ……じゃあ東峰の事は忘れて、俺と話してよ』
「えっ…」
『美咲ちゃん、東峰に気取られて上の空になっちゃってんだろ? …東峰とは学校でいつでも会えるじゃん。…電話の時くらい、俺だけに集中してよ』
「衛輔くん……確かに上の空になっちゃって悪いと思うけど…旭先輩の事を忘れて話し込むってのは……」

思わず口にしてしまった「旭先輩」という言葉を聞いて、横にいた旭先輩の目が丸くなっていった。

『……なーんてな。意地悪なこと言ってごめんな! じゃあさ、スピーカーにして東峰も入れて一緒に話そうぜ。…やっぱり、フェアにいかないとな、こういうの』
「フェア、って?」
『…なんでもない、こっちの話。スピーカーにしていいよ。東峰にも言ってみて、一緒に話そうって』
「うん、分かった」
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