第33章 初対面。
「…私もごくごく平凡だと思うんだけど…」
潔子先輩が少し恥ずかしそうに、俯いている。そんな仕草すら綺麗で、見とれてしまった。潔子先輩にドキドキしてしまうのも、なんだか懐かしい感覚だ。
「美咲ちゃん、この子は谷地仁花ちゃん。同じ一年生だよ。…転校していった後に、マネージャーになってもらったの。まだ入部して間もないから、色々助けてあげてね」
「よろしくお願いしあっす!」
また谷地さんは勢いよく頭を下げた。星形のゴムがその勢いにつられて大きく揺れ動く。谷地さんのつむじを見つめながら、私も彼女に言葉を返した。
「こちらこそよろしくね。私もマネージャー業務、まだまだ勉強中だから、一緒に頑張ろう」
「ッアス!」
本当は、少しだけ複雑な気持ちだった。自分の代わり…なんて言ったら谷地さんに失礼だけど、私の他にもマネージャーはいたのだと思うと、なんとも言えない気持ちになった。
烏野に戻ってこられる保証なんて無かったから、後任のマネージャーを探すのも無理はないんだけど。
谷地さんと二人、裏での仕事を任されて、谷地さんと連れ立って倉庫の方へと向かった。
その道中で、谷地さんは不安そうにポツリと言葉を漏らした。
「…黒崎さんが戻ってきたのなら、私は必要ない気がしてきた……。ただでさえ、私失敗ばかりだし…」
私を『パーフェクトガール』だと誉めそやしていた谷地さんは、私と比べてどんなに自分が駄目なのかを切々と訴えてきた。内容を聞けば、小さな失敗の話ばかりで、そんなに気にせずともよさそうなのに、と思ってしまうばかりだった。
そんな谷地さんを見ていると、マネージャーになる前、自分に自信が持てなかった頃のことが自然と思い出された。
谷地さんもあの時の私みたいに、誰かに背中を押してもらえたら。もっと自信を持ってマネージャー業務をやれるはず。
それに、谷地さんにはいてもらわないと困るのだ。
来年、私は烏野にはいないのだから……。
誰にもまだ、その事は言えないでいたけれど……谷地さんにマネージャーを続けてもらうには、彼女にだけは打ち明けた方がいいかもしれない。
「私も、最初は全然自信なかったよ。潔子先輩が素敵すぎたし、マネの仕事も思ってたよりハードだったし。バレーのルールだって知らないし、マネージャーだって未経験だった」