第33章 初対面。
大事な予選の日だった。会場へ出発する直前だった。ただでさえ緊張する試合前に、皆の前で変な騒ぎを起こしてしまったことは、本当に失敗だったと思っている。
あの出来事が、試合に影響したというのなら……私はどう償えばいいのだろう。
「…お騒がせして、申し訳ありませんでした。…月島くんの言う通り、虫がいい話だと自分でも思っています。だけど、私はみんなと春高に行きたいです。その為に、みんなのサポートを精一杯やりたいです。もう一度、バレー部に参加させて下さい!」
深く、頭を下げる。月島くんのため息が聞こえた。頭を下げればいいってもんじゃないデショ、なんて思っているに違いない。
「いいに決まってるじゃん。そんな頭下げることなんてないよ」
「スガさんの言う通りだぞ、美咲ちゃん。そもそも、こないだの事だって、美咲ちゃんが悪いわけじゃねぇんだし。色々、事情があったんだろ」
菅原先輩と、田中先輩がそうやって優しい言葉をかけてくれたけれど、月島くんはいまだ納得していないような顔をしていた。それでも他に私の復帰に異を唱える人はいなかったからか、月島くんはそれ以上何も言わなかった。
「さ、練習再開するぞ! 清水、谷地さんに黒崎の事、紹介しておいてくれるか」
澤村先輩の言葉に、部員のみんなは練習を再開しだした。潔子先輩に手招きされて、さっきの女の子―谷地さんと顔合わせすることになった。
「仁花ちゃん、こないだ話してた美咲ちゃん。事情は前に少し話したと思うけど……」
「あ、貴方が噂のパーフェクトガール!! そうとは知らずに先ほどは失礼しましたっ!!」
すごい勢いで谷地さんに頭を下げられてしまった。あまりの勢いに、目を瞬かせるしか出来ない。
『パーフェクトガール』って……潔子先輩は私の事を一体どう彼女に説明したんだろう……。
「えっと……よく、分からないけど、私は別にそんなすごい人間じゃないよ?」
「いえいえ! 清水先輩から聞きましたよ! 気配り上手で話し上手、その上料理もプロ並みだとか……!! 私なんかが後釜に入ってしまって申し訳ないです…!」
「ええっ…?! いや、それは過大評価だよ…私はごくごく平々凡々だよ。潔子先輩の方が何倍も『パーフェクトガール』だと思うよ?」