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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第31章 新しき幕開け


「帰ってきた、ってことは……また烏野に通うのか?」

 大地の問いかけに、黒崎は頷いた。

 烏野の紺色のブレザーと違い、真っ白な制服に身を包んだ黒崎は、会えなかった一ヶ月の間に、ずいぶんと大人びたような気がする。

 それが、単に制服のせいではないことは、何となく分かる。
一ヶ月、会えなかった間に何があったのか。どうして宮城に戻ってこられたのか。聞きたいことはたくさんあった。

 けれど今いっぺんにあれこれ聞ける状況にはない。
烏野に通うのであれば、折を見て話を聞けばいい。今はただ、彼女が戻ってきたことを喜べばいいんだ。

「また明日から、烏野に通います」

 黒崎の言葉に、俺はまた舞い上がった。
明日からまた、黒崎と同じ空間で過ごせると思うと、嬉しくてたまらなかった。気持ちが外に漏れないように、ぐっと内頬を噛むけれど、口角が緩んでいくのは止められそうになかった。

「今日も、放課後体育館に行ったんですけど、誰もいなくて……」
「あー、今日は体育館の点検日でな。部活休みだったんだ」

 スガが答えると、黒崎は納得した様子で頷いていた。

「そうだったんですか。…先輩達は、何をなさっていたんですか?」
「俺ら? ファミレスでだべってた。休み、っていっても何していいか分かんなくてさ。結局バレーの話しかしてないけど」
「あっ、つーかスガ、旭! お前らお金払えよ! 俺お前らの分立て替えてんだからな?!」

 大地が険しい顔で、俺とスガに詰め寄ってくる。そういえば黒崎の姿を見つけて、何も考えずに店を飛び出しちゃったんだっけ。

「ごめん、大地。だって旭が店飛び出してくからさぁ。美咲ちゃんの姿見つけてからの旭、すごいいき…モガッ?!「スガ!!」

 慌ててスガの口を塞いで、それ以上スガが何も言えないように必死で抑えた。スガはそれでもモゴモゴと何事か黒崎に伝えようと抵抗している。

 黒崎と思わしき姿を見つけて飛び出していったこととか、その勢いのまま黒崎を抱きしめてしまったこととか、改めて思い返すと恥ずかしいことばかりだ。
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