第31章 新しき幕開け
「俺達には他のやつらみたいな持ち味ってのが無いと思った。日向と影山の速攻は別にしてな。チーム全体としての持ち味がさ」
繋ぎのうまい音駒、サーブが強い生川、コンビネーションの強い森然、エース主軸の梟谷……どの学校も、それぞれ色があった。対して烏野は、日向と影山の速攻を除けばごく平凡なチームなのは確かだ。
「伊達工とか、青城とかもそうだけど。それぞれに勝ちパターンみたいなのがあるんだよな。俺達にはそういうの、ないじゃん。でも逆に言えば、型にはまってない分色々やれんじゃないかって思ったんだよね」
「色々って……?」
「強くなるためには、なりふり構ってらんないってこと。武ちゃんも言ってただろ、『ただの敵と見るのか、技を吸収すべき師と見るのか』って」
「…つまり、他のやつらのマネをするってことか?」
俺の言葉に、スガはちょっとだけ首を振った。どうやら『マネ』という言葉が気に入らなかったようだ。
「ただのマネじゃなくて。俺達のモノにするんだよ」
スガの目がギラリと光る。スガの言う様に、俺も今までと同じじゃ駄目だとは思っていた。合宿中の練習試合の中で、日向にボールを奪われそうになったあの瞬間から、みなどこか意識が変わっていったような気がする。
エースとして、胸を張って戦って行けるように、自分の技術をもっと磨いていかなければならないと思った。
スガは、個人だけでなく、チーム全体のレベルアップを図りたいと思ったのだろう。その為には、他の学校の技を盗んでいく必要があるということなのか。
「やれること、全部やろうぜ。……俺、悔い残したくないんだ。この三年間やってきたこと、ちゃんと結果に残したいんだ」
スガの気持ちは痛いほどよく分かった。三年間、一緒にやってきた仲間だからこそ、その思いは三人とも同じだった。
希望に満ち溢れて烏野バレー部に入部した、一年の春。だけど『強豪』と呼ばれていた時代は昔のことだと、周囲の人間に思われていて、当の烏野バレー部員の先輩達でさえ『落ちた強豪』という呼び名に甘んじていた。
それはじわじわと俺達を蝕んでいって、いつの間にか箸にも棒にも引っかからない存在に、自分達は成り下がっていたのだ。
それが、今になって変化の時を迎えている。
一年が入部して、新しいコーチがついて、マネージャーも増えて。