第31章 新しき幕開け
7月9日。
1泊2日の東京での遠征合宿を終えた翌日は、いつも通りに学校が始まった。たった二日間の合宿でも、中身の濃い時間を過ごしたからか、非日常を過ごした感が強かった。
月曜日、いつものように登校して、授業を受ける。たったそれだけのことなのに、そこでようやく日常に戻ってきた感じがした。
今日は、体育館の点検日で珍しく部活が休みになった。それまでほとんど休み無く部活漬けの日々だったから、たまにはゆっくり休んでください、と武ちゃんからのお達しが下った。
そうはいっても、俺を始めバレー部のやつらはバレー一筋の奴が多かったから、部活の無い放課後をどう過ごそうかと悩んでいた。
なんとなく三年のメンバーで集まって、放課後の予定を相談しあいだした。
「どうする? 昨日までの練習の疲れもあるだろうから、体休めろって言われたけど」
「勉強でもするか」
大地がさらりと言った『勉強』というワードに思わず眉根が寄る。こないだ期末試験が終わったばっかりなのに、せっかくの休みに『勉強』なんて……。
「そんな顔するなよ。俺とスガはこう見えても受験生なんだからな?」
「あぁ、そっか……」
進学コースの二人は、俺と違って受験勉強もこなさないといけない。ただでさえ毎日部活漬けなのだ、たまの休みには勉強に力を入れたくなるのも無理はない。
……というか普段、この二人いつ勉強してるんだろう。
部活終わって家帰ってから、やってるんだろうけど……家に帰ったらへとへとで夕飯食べてすぐ寝てしまう俺からすると、考えただけで頭がぶるぶるしてくる。
「確かに、勉強もしないとなぁ」
「図書館でも行くか?」
二人の邪魔をするわけにもいかないから、他のことをしようと提案するわけにもいかないし、かといって一緒に勉強する気にはなれなかった。二人が図書館に行くなら、俺は真っ直ぐ家に帰ろうかな。
「でもさ、たまには三人でどっか行かないか? 俺らずーっとバレー漬けで三人で遊んだりとかしてないじゃん。こうやって一緒にいられる時間も残り少ないんだし、思い出作っとこうぜ」
スガの提案に、大地は少しだけ渋い顔をした。
「思い出作るったって。遠出出来るわけでもないし……何するんだ?」
「うーん……」
思い出作りを提案したスガだったけど、具体的な案があるわけじゃなかったらしい。