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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第30章 夏の大三角形


 その後しばらくして、田中さんのお姉さんと日向と影山くんが体育館に現れた。合流した日向と影山くんの活躍もあって烏野はようやく一勝を手にした。

 その日の練習はそれで終了。私達マネージャーは配膳の手伝いをする為に、急いで食堂へ向かった。

 食事を終えると、その後は自由時間だった。体育館に戻って自主練をする人もいたし、ゆっくり休息をとる人もいて、各々好きに過ごしているようだった。

「あっ」
「どうしたの仁花ちゃん」
「洗濯物! 回してそのままでした!! 干してきます!!」

 清水先輩と一緒に食堂でゆっくりお茶を飲んでいた私は、湯呑に残っていたお茶を飲み干して急ぎ洗濯機へと向かった。そんなに時間は経っていないと思うけど、放置された生乾きの洗濯物を想像して顔をしかめてしまう。

 仕事しかけたまま忘れてしまうなんて、こんなんじゃ社会に出たらすぐクビだ……! 任された簡単な仕事一つ出来ないようじゃ路頭に迷う人生しか送れないんじゃなかろうか。

 悲壮感漂う未来を想像してしまって、体がぶるぶると震えた。「くっさいタオルをよこしやがって!」と上司に怒鳴られる自分の姿が脳裏に浮かぶ。

 幸い、洗濯機の中の洗濯物はまだ臭いを放ってはいなかった。急いで洗濯物を干して、胸をなでおろす。ほどよく風もふいているから、明日の朝には乾いているだろう。

 洗濯籠を胸に抱えて、元来た道を戻っていた時だった。

 東峰さんと、音駒のリベロ―確か、夜久さん―が連れ立って歩いているのが目に入った。ちょうど歩いていく方向が私と同じで、図らずも二人の後を追うような形になった。

 朝、真剣な顔で何事か話していた二人の姿が思い浮かんで、声をかけることは憚られた。今も朝と同じように、どこか緊張感を漂わせながら話をしている。

 体育館の裏手まで来た時に、ぴたりと二人の足が止まった。さっと挨拶して通り過ぎることも考えたけど、何となくそうしにくくて、私も少し離れた場所で足を止めた。

「……俺もさ、探してみたんだ。知り合いに片っ端から声かけて、学校に美咲ちゃんがいないかって聞いて回った。見つかりはしなかったけどな……」
「東京って言ったって、広いもんな。学校だってそれこそ何百校ってあるだろ? そう簡単には、見つからないよな」
「なんか他に手がかりないのか? その後家族の人から話とか」
 
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