第30章 夏の大三角形
この合同合宿は、梟谷学園グループの学校が集まっての合宿で、元々は音駒、梟谷、森然、生川の四校で行われていたものだった。
私が入部する前の練習試合をきっかけにして、烏野もその合同合宿に参加させてもらうことになったらしい。
音駒以外の学校は女子マネージャーの姿があったのだけれど、私以外みんな三年生だということをその時初めて知った。来年も合宿に参加することになれば、その時女子は私一人かもしれないということだった。
もう7月だし、これから入部する人はほぼいないだろう。来年4月になって新しいマネージャーが入れば女子は私一人じゃないだろうけど……紅一点という響きは憧れがあるけれど、実際にそうなったらなんだか色々と気まずそうだ。
「ま、来年新しい子入るかもしれないし、分かんないけど」
「もし一人だったとしても『ハーレムだ~』って楽しめばいいよ~。女子一人って、なかなか経験できないよ~?」
雀田さんも白福さんも、来年を想像して固まってしまった私を気遣う様に、そう言葉を続けた。
水場や洗濯機のある場所、自分達の寝床など、一通り案内してもらって、私達はようやく自分のチームの元へ戻ったのだった。
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体育館に戻ると、すでに練習試合が始まっていた。
この合宿では、ひたすら練習試合をやって、負けたらペナルティとしてフライングレシーブの動きをしながらコートを一周するらしい。
清水先輩の隣で、試合の行方を見守る。
練習試合を見るのは、これが三回目だった。それまでの練習試合では、烏野も対戦相手といい勝負をしていたのだけど……。
この合宿の練習試合では、点差をつけられて負けることが続いていた。もう何度フライングをする部員の姿を見ただろうか。
試合も1セットとはいえあまり間を置かずに続けてあるし、ペナルティはあるしで、みんな疲れているようだった。
「なかなか勝てませんね……」
「うん。やっぱり強いね、他の学校」
烏野の強さがどのくらいなのか、まだよく分からなかったけれど、相手の学校はそれぞれに強みを持っているのは試合を見ていてよく分かった。
それに比べると、烏野には突出した何かは無いように見えた。ここにいない日向と影山くんがいれば、その突出した何かを補えるような気がしたけれど、口には出さなかった。