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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第30章 夏の大三角形


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「仁花ちゃん、着いたよ」
「ふぇっ!?」

 清水先輩に揺り起こされて飛び起きると、車内は明るくなっていた。窓の外から輝く朝日が差し込んでいる。いつの間にか眠り込んでいたようで、到着するまでの記憶が全く無い。

「眠れたみたいでよかった」
「あっ、はい! 気が付いたら寝ちゃってました」

 慌ててよだれが出てないか口元をぬぐった私を見て、清水先輩が微笑む。少し疲れた顔の武田先生と烏養コーチの呼びかけで、他の部員の人達も眠りから覚めていく。

 バスから降りると、黒いTシャツに赤いジャージを履いた人たちが待ち構えていた。つんつんした髪型の人が、澤村先輩に声をかけている。

 あの人達と烏野の人達は、知り合いなのだろうか。初めて見る人たちにどぎまぎしていると、清水先輩がそっと教えてくれた。

「音駒高校の人達だよ。5月の合宿で、練習試合をしているの。うちの学校とは昔からライバル関係らしくてね……」

 ライバル関係といっても、今賑やかに談笑している部員の姿を見れば、それが険悪なものでないことは理解できた。お互いに切磋琢磨する、そんなライバルなのだと思う。

「よぉ、東峰」
「……夜久」

 東峰さんの元に、小柄な音駒の部員の人が近づいた。他の人達と比べて、どこか緊張感のある二人の雰囲気が少し気にかかった。

 挨拶を交わして、何事か話し込んでいるけれど、二人とも楽しそうな感じはしない。東峰さんの顔がいつもより真剣な面持ちをしていたから、少しだけ話の内容が気になった。耳をそばだててまで聞こうとは思わなかったけれど、それでも少しだけ会話の内容が耳に入った。

「連絡、きたか?」
「いや……相変わらずだよ。そっちは?」
「俺も同じ。こっちから送れるのは送れるけどな。向こうからは全然」
「そうか……」

 二人が何の話をしているのか、聞いても全然分からなかった。真剣な顔で話をしていたから、横から首を突っ込むわけにもいかなくて、私は清水先輩と荷物を持って合宿所へ向かうことにした。

「うおおおお!!?」

 突然の雄叫びに、心臓が口から飛び出そうになった。私と清水先輩の目の前で、金髪のモヒカンの人が膝から崩れ落ちていく。

「新しいマネージャーが増えている……?!」

  モヒカンの人が言う「新しいマネージャー」とは、私のことだろうか。
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