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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第4章 合宿の準備


1人で帰る方が気が楽ではあるのだが、部活終了後帰宅時間が少し遅いこともあり、防犯上、男子部員と帰宅するのは先生や家族からすると安心できるようなので、私も特に拒否することもなく共に帰宅する生活を続けている。

この部員達との帰宅で嬉しいことがあった。
それは、家まで旭先輩が送ってくれることだった。
偶然旭先輩の自宅と我が家が近所だったので、初日に旭先輩が自宅まで送り届けてくれてからというもの、それが以前から決まっていたかのように日課になっていったのだった。

そう長い時間ではないけれど、旭先輩と2人きりになれるのは嬉しかった。
初めのうちはぎこちなかった会話も、少しマシになってきたと思う。
少しずつ、少しずつ、旭先輩との距離が縮まってきているような気がして嬉しかった。

「そういえば、明日清水と合宿の打ち合わせするんだって?」

「はい!主に食事のメニューについて話し合う予定なんです。そうだ、旭先輩は何かリクエストあります?食事の」

「うーん、そうだなぁ。やっぱり肉、肉が食いたい」

「あはは、お肉ですね!了解です。で、鶏・豚・牛とありますけど…」

「あ、ごめん。肉ってだけじゃ大雑把すぎたか。そうだなぁ…うーん、唐揚げとかかな。他の奴らも唐揚げは好きだろうし」

「唐揚げ、了解です!ちなみに、塩味としょうゆ味、どっちが好み、とかあります?」

「え、味?味かぁー…うーんどっちも好きだけど……」

言いかけて、旭先輩がちらりとこちらを見る。
多分、唐揚げの味なんて、何でもいいのだろうと思う。
けれど旭先輩は『どっちでもいいよ』とは言わずに、どちらか決めようとしてくれている。
こうやって細かいことでもちゃんと答えてくれるところが好きだ。
私にきちんと向き合ってくれている気がするから。

「そうだなぁ、しょうゆ味、かな。」

旭先輩の太めの眉が力なく下がって、少し八の字になる。
いかつい風貌でもこんな表情をされると可愛く見えてしまうのが不思議だ。

「よーし!めっちゃ美味しい唐揚げ作るんで、期待しといてください!」

ガッツポーズをして旭先輩の方を向くと、ぷっ、と旭先輩は噴き出した。
あまりにも気合を入れた私に、少しだけ困惑した顔で旭先輩は笑っている。
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