第4章 合宿の準備
帰ったらすぐ色んなメニューを調べよう。
身体づくりに必要な栄養素とか味とか予算とか、考えることはいっぱいありそう。
「なんだか楽しそうだね」
潔子先輩に言われ、合宿にわくわくする気持ちが顔に出ていたことを知る。
遠足前の子供みたいな気持ちも多少あったから、少しだけ気恥ずかしくなる。
潔子先輩はそれをとがめるわけでもなく、むしろ嬉しそうに受けとめてくれているようだった。
「合宿とか、初めてなんです。なんか青春って感じがしてちょっとワクワクしました」
「あはは、そっか。可愛いね、美咲ちゃん」
和やかな私と潔子先輩の間に、暑苦しい2年生ズが割り込むように口をはさむ。
「青春…なんていい響きなんだ……!そうだ美咲ちゃん、まさに合宿は青春の縮図…!いいこと言った!」
「私そこまで言ってません」
「相手にしちゃダメよ、美咲ちゃん」
潔子先輩にガードされて、田中先輩達から離れるように腕をひいて連れて行かれた。
そんな潔子先輩の後ろ姿を恍惚の表情で眺めている2年生ズを尻目に、私達はまたマネージャー業務へと戻ったのだった。
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「じゃあ明日のお昼休みに合宿中のメニュー、一緒に考えよっか」
「はい!」
部活が終わって帰り支度をしながら、潔子先輩と合宿のことで盛り上がった。
潔子先輩も合宿は私と同じで楽しみなようだ。
そのことが嬉しくて、私の顔は自然と笑みがこぼれていた。
バレー部員は仲が良いのか各学年みな連れ立って帰宅することが多かった。
それぞれ家の方向はバラバラだけれど、途中『坂ノ下商店』あたりまではほとんどの部員が一緒になる。
残念ながら潔子先輩は学校から家が近い為、校門を出て少ししたらさよならしてしまう。
私は紅一点、3年生達に混じって帰宅するのが習慣になっていた。
始めのうちは居心地の悪さを多少感じていたのだけれど、旭先輩を始め、先輩達が気を遣ってくれて色々話しかけてくれたりしたので、なんとかその場に溶け込ませてもらっていた。