第28章 それでも前に進め。
「俺は春高まで残るつもりだよ。前から言ってたとおり」
昼休み、大地とスガと集まって、部活を引退するか続けるか、話し合うことになった。俺は進学するつもりが無かったから、進学組の二人に比べると、わりかし簡単に部活を続ける決断が出来たと思う。
俺以外の三年は、清水も含めてみんな大学に進む予定だったから、もしかしたら三年で残るのは俺だけかもしれない、なんて思っていた。
俺達は今まで大会で目立った成績を残してきたわけでもないから、スポーツ推薦は受けられないだろう。インターハイが終わった他の運動部の奴らも、皆受験へと意識を切り替えている。スガの教室をのぞいた時なんか、クラスの大半の人間が受験対策の本とにらめっこしていた。
スガや大地がどんな進路を考えているのかは分からないが、春高まで三年が残れるようになったからといって、みんなで残ろう、とは言えない。
二人にどうするのか尋ねると、スガが二つ返事で「俺も残る」と言い出した。けれど大地は一人、ここで引退した方がいいんじゃないか、と言う。
大地は1、2年で新体制のチームを早めに作った方が、後輩の為になるのでは、という考えのようだった。
「大地、それって本音? 俺は一、二年に出て行ってくださいって言われない限り、残るぞ。たとえ大地と旭がいなくても」
スガは真っ直ぐに大地を見据えている。スガに気圧されたのか、大地はぐっと言葉に詰まっていた。本心では、大地も残りたいんだと思う。
ずっと、春高に行く、オレンジコートに行く、と口癖のように言っていたから。
それにしてもスガは酷い。俺も残るって何回も言ってるのに、一人でも残るとか言うなんて。大地を煽る為なのかもしれないけれど。
「いや、だから俺残るって言ったべ?! 元々進学希望じゃないし、それに……」
青城にリベンジしたいと思う。それに三年皆で春高に行きたいとも思う。それが俺のバレーを続けたい原動力になっている。
だけど、俺にはもう一つ、原動力になっていたものがあった。黒崎のことだ。
インハイ予選のあの日、朝別れてから連絡が取れなくなった黒崎。電話も通じず、メールも、ラインも返信が無く、義明くん達ですら居場所がつかめないままだ。
烏野に戻ってくる望みが限りなく薄いことは、分かってる。