第4章 合宿の準備
「合宿、ですか?」
バレー部に入部して3日目。
潔子先輩の口から唐突にそれは告げられた。
「そう、毎年ゴールデンウィークの時期に合宿をやるんだけどね、美咲ちゃん出られるかな?」
「はい、大丈夫です!」
「そっか、良かった。あと確認しておきたいんだけど、マネージャーも校内の合宿所に宿泊できるんだけど、どうする?」
校内にそんな施設があったとは初耳だった。
もしかしたら入学の際に説明があったかもしれないけれど、興味がなかったから記憶に残っていない。
合宿中は朝から晩までみっちり練習だ。
遅くまで部活をして帰宅して、また朝早く登校するのは少ししんどいかもしれない。
それに、家から離れられるのは、正直ありがたい。
…酔っぱらった母の相手をせずに済みそうだから。
「そうですね……出来たら宿泊したいです」
「分かった。じゃあ今年は私も泊まろうかな」
今年は、ってことは今まではそうじゃなかったんだろうか。
なんてことをぼんやり思っていたら、西谷先輩と田中先輩の絶叫が聞こえた。
「えええええええ!!!潔子さんと一つ同じ屋根の下ぁ?!?!」
「ノヤっさん、これヤバくないか?!ヤバいよな?!」
まだ入部して3日目だけれど、この2人の先輩が潔子先輩に対してどういう感情を抱いているのか、嫌というほど教えられた(毎日あんな光景を見せられたら誰だって嫌でも理解する)ので、今回の反応にもそれほど驚きはしなかった。
まぁだいぶ引きはしたけれど。
テンションMAXの2人をガン無視で潔子先輩は合宿の話を続ける。
そんな潔子先輩の後ろでまたもや2人の絶叫が響いた。
「ガン無視最高ッス…!!!」
私には2人の先輩の反応がよく理解できなかったが、潔子先輩に倣ってほうっておくことにした。
合宿中は普段の部活と違って、朝昼晩の食事の準備もマネの仕事に追加されるそうで、早速明日潔子先輩と4日分の献立を相談することになった。
武田先生も手伝ってくれるらしいけれど、部員全員分の食事を朝昼晩と作るのはかなり骨が折れそうだ。
でも普段家で料理することが多かったから、料理の腕に不安はあまりない。
こういう時だけは、幼い頃から家事を仕込んでくれた母親に感謝しなければと思う。
「そんなに難しいものは作らないけど、なにせ量が多いからちょっと大変だけど頑張ろうね」
「はい!」