第27章 落花流水 東峰side
俺のおかげで、『居場所』が見つかったって。そう言って、涙を浮かべていたのに。
「嘘、でしょう」
思わずそんな言葉が口をついて出てしまっていた。おばあさんの眉がぴくりと動いたのが見えた。微笑みを浮かべてはいるけれど、何か嫌な感じがした。
「いえ、残念だけれど本当なのよ」
おばあさんの言葉に、俺達は誰ともなく顔を見合わせた。いきなりの出来事に、皆どこか信じきれないような面持ちだった。
黒崎本人の口から聞くまでは、俺はこの人の言葉を信用出来ないと思った。
――事実であってほしくないと、強く思っていたから。
「おはようございま――」
明るい声がして、黒崎が校門を駆けてきていた。
俺とスガは黒崎の元に走り寄って、本人に真相を確かめた。
「美咲ちゃん!!」
「黒崎、どういう事?!」
「えっ、な、何がですか……?!」
詰め寄る俺達に、黒崎は何が何だか分からないといった顔だ。スガが言葉を付け加えて、また黒崎に詰め寄った。
「今日で宮城を離れるって、どういう事?!」
黒崎は、小さく首を振るだけで、何も言わなかった。
スガが畳みかけるように言葉を続ける。
「美咲ちゃんのおばあさんって人が、今日で転校するからお別れです、って。今までお世話になりました、って言ってんだけど!?」
「わ、たしは、離れるつもり、ないです……!」
「だよな、黒崎?! いきなりそんなワケないよな?!」
黒崎の両肩を掴むと、黒崎はこくこくと頷いた。
良かった、やっぱりさっきの話は嘘なんだ。でも、なんでそんな嘘を……?
そう思った時、おばあさんが俺から黒崎を引き離すように間に割って入ってきた。
にっこり微笑んでいるけれど、どこか総毛立ってしまう笑みだった。
「ごめんなさいね。この子も突然のことで気持ちの整理がまだついていないのよ。でも転校するのは事実なの。申し訳ないけれど、バレー部も退部させていただくことになるわ」
「でもっ、黒崎はっ……」
「途中で投げ出す形になって心苦しいけれど、ごめんなさいね」
それ以上何も言わせないつもりなのか、おばあさんは俺の言葉を遮った。