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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第24章 私の居場所


「お疲れさまでした! 二回戦突破、やりましたね!」

 私の言葉に、みんなが笑顔で頷く。
今日の試合はこれで終わりだったから、少し肩の力が抜けたのか皆どこかホッとした顔をしていた。

 明日の対戦に向けて、青城の試合を観戦するという話を烏養コーチから聞かされ、皆で二階席へと向かう。

「……黒崎」

 途中、声をかけてきたのは旭先輩だった。先輩は恥ずかしそうに後頭部を掻いてこちらを見ている。

「応援、ありがとうな。黒崎の声援に何度も背中押されたよ。壁にぶつかっても、何度でも挑もうって気持ちになれた。……後ろから飛んでくる黒崎の声が、すごく力になったよ」
「旭先輩……ありがとうございます」
「えっ、いやお礼を言うのは俺の方だよ」

 旭先輩の言葉に首を振る。不思議そうにこちらを見つめる旭先輩の目をじっと見つめた。

「私はここにいてもいいんだ、って思わせてもらえたから。だから、お礼を言いたいんです、旭先輩に」
「……ここにいてもいいって……そんな、当たり前だろ、お前はバレー部の一員なんだから」

 私はまた旭先輩の言葉に首を振った。先輩にとっては当たり前かもしれないけれど、私にとってはそうではないのだ。

「……私の育ってきた環境は、普通と違って……私はいつでも『居場所』を探してきたように思うんです。引っ越したくさんして来たから、どんなに仲良くなってもそのうち疎遠になってしまうことが続いて。だから、いつの間にか積極的に他人と関わることをしなくなったんです」

 私の話を旭先輩は黙って聞いてくれている。少し気恥ずかしい気もしたけれど、私の気持ちを知ってほしくて、言葉を続ける。

「でも、やっぱり心のどこかで、自分を受け入れてほしい、人と繋がりたい、『居場所』が欲しいってずっと思ってたんだと思います。
衛輔くんのお家にご厄介になっていた時、これが『家族』なんだ、私の『居場所』なんだって、思ったこともあったんです。
でも、それも突然無くなってしまって。それから、ずっと自分の『居場所』を探してきたんだと思います」

 旭先輩はやっぱり黙ったまま、私の話に耳を傾けている。一呼吸おいて、私はまた言葉を続けた。
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