第24章 私の居場所
菅原先輩と澤村先輩の声に続けて、私も叫んだ。
旭先輩の目の前には、また大きな壁が三枚。あの壁を打ち破れば、烏野の勝利。
気合の入った旭先輩の一撃は、青根さんの手をはじいた。
弾かれたボールは白帯の上に乗っかり、どちらのコートに落ちようか迷っているように見えた。
「入って!!」
電波でも念でも、何でもいい。少しでもボールを押し出せれば、なんてことを考えて、叫ぶ。
揺れたボールはゆっくりと伊達工側に落ちていく。
二口さんが走って、ボールを拾いに行ったけれど、手が届く前にボールは伊達工のコートに足をつけた。
試合終了を告げる笛の音が鳴ると、烏野コートは大きな歓声に沸いた。
二階席も同じように沸き立つ。女子バレー部の人達と抱きしめ合って喜んだ。
「勝ったよ!東峰が決めたよ!!最後!!」
「勝ちましたね!!決めましたね!!」
道宮先輩におうむ返しで答えていたら、視界がぼやけてきた。旭先輩が壁を打ち破ったのが自分の事のように嬉しくて、また涙が出てきてしまった。
道宮先輩が優しく私の頭を撫でてくれる。
「あ、美咲ちゃん、ほら皆並んでる」
道宮先輩に促されるように、コートに目をやると、試合を終えて晴れやかな顔をした部員のみんなが二階席を見上げて整列していた。
慌てて涙をぬぐうと、澤村先輩に続いてみんなが一斉に声を上げた。
「応援ありがとうございました!」
「ありがとうございました!!」
顔を上げた旭先輩達と目が合う。菅原先輩が私を指さしていつものいたずらっ子みたいな笑顔を浮かべる。隣の旭先輩を肘で小突いて、何やら話している。
旭先輩はそれをうけて後頭部を掻いて恥ずかしそうにしながら、私に手を振ってくれた。
「私、下に降りますね!」
「うん、行っておいで!」
皆に見送られて、私は階下へと急いだ。早く皆にお疲れ様、おめでとう、と伝えたかった。体育館の入り口で待ち受けていた皆に、息を切らしたまま駆け寄る。
「おっ、おめ、おつか、でしたっ!!」
「ふはっ! 美咲ちゃん慌てすぎだべ。はい、深呼吸深呼吸~」
言いたいことがごっちゃになってしまった私に、菅原先輩は笑って息を整えるように促してきた。こくこくと頷いて、深呼吸を何度かする。
ふぅと一息ついて、私はもう一度皆の方を向いた。