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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第24章 私の居場所


  ラスト1点をもぎ取るために、旭先輩が飛んだ。伊達工の3枚ブロックに阻まれて、ボールは烏野コートの後方へ落ちていく。
日向がいなければ、壁を打ち破ることは出来ないのだろうか。

 床に落ちる直前のボールを、西谷先輩が飛びこんで拾った。それを見て、旭先輩が叫ぶ。

「レフト! もう一本!!」

 旭先輩の声に、影山くんが旭先輩の真後ろからトスを上げた。

 ネット近くに上がったボールは、旭先輩と青根さんの押し合いになった。二人の高さはほぼ互角。どちらにボールが動いてもおかしくはなかった。

 祈るようにボールを見つめるも、青根さんが押し勝って無情にもボールは烏野コートへ落ちていく。青根さんが力強く押し切ったから、ボールは凄いスピードで床に向かって行く。

 伊達工の得点になった、と誰もが思ったその時。

「足?!」

 西谷先輩が、滑り込むようにボールと床の間に左足を挟み込んで、ボールを上げた。西谷先輩のスーパーセーブに、会場がわっと沸きあがる。西谷先輩がボールを上げたのとほぼ同時に、旭先輩がまたスパイクを打つため、後方へ下がり始める。

「戻るの早い!」

 道宮先輩も、旭先輩の動きに目をやっていた。
 旭先輩はもう二回連続で攻撃に跳んでいる。それでもきっと先輩は次も攻撃に跳ぶつもりなのだろう。視線はボールを追ったまま、攻撃に備えて助走距離の確保に入っている。

「次、誰に上げる?!」
「立て続けに一人が打つのはキツイし……」

 嶋田さんと滝ノ上さんは、旭先輩がまた攻撃に入るとは考えていないようだった。確かに短いスパンで何度も同じ人間が攻撃に入るのは得策ではないと思う。
いくら攻撃力が高くても、連続で跳べば疲弊もするし、何よりまたあの壁に阻まれるのではないか、という思いも頭を横切ってしまう。

 三月の試合でも、多分こんな風に、何度も何度も旭先輩は壁に阻まれてしまったのだろう。バレーを辞めたくなるくらいに。

 それでも何とか、打ち破ってほしい。そう祈ってコート上の旭先輩を見つめる。

「もう一回!!」
「決まるまでだ!!」

 菅原先輩がアップゾーンから叫ぶと、それに続いて旭先輩も影山くんに向かって叫んだ。二人の声に応えるように、影山くんは旭先輩にトスを上げる。

「行け! 旭!! 行け!!」
「ブチ抜け旭!!」
「旭先輩!!」
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