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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第24章 私の居場所


 次は影山くんのサーブ。ボールが烏野コートに返ってきて、西谷先輩が青根さんのスパイクを拾った。

「バック!!」

 旭先輩が手をあげてボールを要求する。田中先輩がアンダーでボールをあげて、旭先輩へと託した。後方から走りこんできた旭先輩が両手を大きく振って飛び上がる。

 勢いよく伊達工コートへとボールは飛んでいったけれど、三枚ブロックに綺麗に止められてしまった。

「力で押し切れねぇもんなのか、今の」
「今のはしっかり手に当たってたから……ブロックのタイミングとか当たり所によっては押し切れることもあるけど……」
「へぇ……」
「? 何?」
「いや、お前よく見てんなと思って。こないだまでルールブック握りしめて必死でにらめっこしてたのにな。…ほんと、好きなんだな、バレー」
「う、うん……単純に見えて、奥が深いからね」
「……ま、それだけじゃねぇんだろうけどよ」

 最後は聞こえなかったふりをして、兄の言葉には返事をしなかった。バレーに詳しくなったのも、あれこれ勉強したのも、きっかけは全部旭先輩からで。
兄は皆までいう事はしなかったけれど、兄の指摘通りだったから恥ずかしくて答えることは出来なかった。

 試合は伊達工の壁に阻まれて気持ちよく攻撃を決めさせてもらえないのが続いたけれど、それを破ったのが日向と影山くんのあの誰にも真似できないスピードの速攻だった。

 二人の速攻が決まってから、明らかに伊達工側に動揺が見られた。
それでも点差はひらかず、両者一歩も譲らずといったところだ。

 旭先輩も何度か攻撃しているが、スッキリとスパイクが決まることはなかった。先輩の目の前に立ちはだかる壁は、物理的にも、精神的にも、高いものなのかもしれない。

「あ、間に合った!」
「すごい、男子伊達工に勝ってるよ!」

 二階席に賑やかな声が響いて、そちらに目をやると烏野女子バレー部の人達が応援に駆けつけていた。

「道宮先輩」
「美咲ちゃん! そっか、マネージャーは一人だけだっけコートに入れるの」
「そうなんです」
「それは寂しかっ……?!」

 道宮先輩が途中で言葉に詰まってしまったから、何事かと思った。背中から突き刺さる視線を感じて、うちの兄が原因だと理解した。
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