第24章 私の居場所
潔子先輩も、西谷先輩も、すごい。私はそう思わずにいられなかった。言葉で、態度で。みんなを鼓舞出来るのが素直に羨ましかった。
私は私で、出来ることを精一杯やるしかない。
西谷先輩の言葉に力をもらったのは、部員達だけでなく私も同じだ。
心配することは何も無い。これだけ頼もしい先輩がいるのだから、みんなを信じて精一杯応援すればいいのだ。
ウォームアップが終わり、私はまた一人二階席へと向かう。
もうさっきみたいに心細いなんて思わなかった。階段を力強く踏みしめて、二階席から烏野コートを見下ろす。
「おい、こっちは向こうみてぇに人いねぇのか?」
椅子にどっかりと腰かけた兄は、向かいの伊達工応援団を指さす。ウォームアップからこっち、ずっと力強くコールされる伊達工の名に、兄は顔をしかめている。
「うちは12人しか部員いないからね」
「向こうは下にも上にも大勢いやがるってのに、寂しいもんだな。学校のやつらが応援に来たりしねぇのか?」
「部活の試合がある人は公欠だけど、今日は普通に学校あるし」
「……そうか。知り合い連れてくれば良かったな」
「い、いいよ。気持ちだけで」
兄の知り合いは、悪い人じゃないんだけど。兄と同じような外見の人が多いから、変な誤解を受けそうな気がする。二階席にずらりと並んだ強面の集団を想像してしまう。
うん、やっぱり高校の部活の応援にはにつかわしくない雰囲気になりそうだ。
「相手のチーム、デカいやつ多いな」
「そうだね……」
コートに並んだ面々を見れば、伊達工には180を越えていそうな選手が多かった。それにあの青根さんがいるだけで、伊達工には『大きい』イメージがつくような気がする。
伊達工の持ち味は、『鉄壁』の名にふさわしく『ブロック』らしい。あの長身を見れば、それも頷ける気がするが、どんな試合になるのだろうか。
試合が始まると、一発目のスパイクに日向が飛んだ。
いつものようにブロックを振り切ったかのように思えたのだが、センターにいた青根さんが凄い勢いで日向の前に飛び出してきた。
かろうじてブロックをかわして一点を決めたものの、青根さんと二口さんの二枚ブロックは日向を捉えかけていた。
「あのデカいの凄ぇな。動きが早ぇ」
「うん……」
青根さんの体の大きさから、あの俊敏さは予想していなかった。