第24章 私の居場所
「えっ、いやなんでもないです!」
「そう? 緊張してるのかと思った」
潔子先輩みたいに凛とした表情をしようと思ったのに、多分ぎこちなさすぎてそんな風に見えてしまったんだろう。ちょっと恥ずかしくなって、潔子先輩から目をそらした。
一回戦の時と同じように、ウォームアップが始まった。その瞬間、二階席にいる伊達工バレー部の大音量の伊達工コールが始まる。
「すごいですね、応援」
「伊達工は部員数多いからね」
潔子先輩の顔はいつもと変わらず涼し気だった。私は伊達工の応援のあまりの迫力に面食らってしまっていた。一回戦の時も、同じ体育館内で伊達工の応援は異彩を放っていたけれど、いざ対戦相手としてそのコールを目の前にすると、その迫力はさらに増している気がする。
ボール拾いをしている間も、二階席から降り注ぐ力強いコール。見上げれば伊達工コート側にはずらりと部員が並んでいる。対して烏野コート側には、兄と他にちらほらと観客がまばらにいるだけだ。
試合が始まれば、私はまた二階席へ行かなければならない。兄に協力を仰いだとしても、とてもあの大声援には太刀打ちできないだろう。
どこか気持ちが重くなっていた、そんな時だった。
「ローリングサンダァァー! アゲインッ!!」
レシーブ練習をしていた西谷先輩が、何かの技名みたいなものを叫びながら、美しい回転レシーブを決めた。
瞬間、烏野側の空気がガラリと変わる。飲まれ気味だった空気が、いつもの部活の時の空気になって、なんだかこちらまで肩の力が抜けた気がする。
「ノヤっさんナイスレシーブ! キレッキレじゃねーか技名以外」
「ハァッ?! 技名もキレッキレだろうが!」
「アゲインも教えてぇー!!」
「また西谷は……」
部員達も肩の力が抜けたのは同じだったようで、西谷先輩を取り囲んでいつもの烏野バレー部の日常が繰り広げられている。
そんな部員達を監督達は呆れ顔で見ていたけれど、西谷先輩は微塵も気にせずに力強く床を踏み鳴らして、こう叫んだのだった。
「よっしゃあ!! 心配することなんか何も無え!! 皆前だけ見てけよォ!! 背中は俺が、護ってやるぜ」
頼もしい西谷先輩の発言に、烏野も伊達工も西谷先輩を称賛の目で見ていた。西谷先輩がいれば、大丈夫。言葉だけでなく、実際にそうだと感じさせる力が西谷先輩にはある。