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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第23章 心はいつも、そばにある。


 それに、旭先輩がバレー部に戻ったのもつい最近のことだ。
私が入部する前に、旭先輩はバレー部に戻ることを決意したらしいけれど、その時のことは詳しくは知らない。
烏野OBとの練習試合で、バレー部に復帰することを決めた、という話はちらりと旭先輩から聞いたことはあるけれど……。

 復帰を決めてから、まだそう日が経っていないことが、気がかりだった。私がバレーのルールブック片手に必死でルールを覚えていた時、出会った旭先輩が『部に戻ると決めたのに、いまだ自信が持てない』と呟いていたのを思い出す。

 先ほどの常波との試合では、不安な様子は微塵も感じなかったけれど、因縁の伊達工相手ではどうなのだろうか。
トーナメント表を見つめる旭先輩に気付かれないように、それとなく先輩の方に目をやった。

 旭先輩はぐっと唇を噛みしめてトーナメント表を見つめていた。その隣にいる西谷先輩も同じように黙って『伊達工』の文字に視線を注いでいる。普段の二人とは何か違う雰囲気を感じて、声をかけたくともかけられなかった。

 旭先輩の横顔に、胸がまたざわついた。応援することしかできない自分が歯痒い。もっとそばで、先輩の力になれたらいいのに。

「対戦相手も分かったことだし、朝集まった場所に一旦集合な」
「はい!」

 澤村先輩がそう告げると部員達は朝着替えを行った体育館の入口へと向かって行った。
旭先輩に声をかけられないまま、潔子先輩と部員達の後をついていく。
皆が集まったのを確認して、烏養コーチが次の試合について指示を出した。

「二回戦のスターティングは、一回戦の時と同じでいく」

 一回戦の常波戦では、一年生の三人がスターティングメンバ―に入っていた。六人制バレーでその半分を一年生が占めているチームは、うち以外にはほぼ無いだろう。
三年生で一人まだ試合に参加していない菅原先輩の表情がどこか固いように思えた。

 三年生にとって、最後のインターハイ。しかも次の試合は三年生にとっても何かと因縁のある試合だ。きっと菅原先輩も旭先輩や澤村先輩と同じようにコートに立って試合をしたいはずだ。

 菅原先輩本人はもちろん、部員の誰も烏養コーチの人選に文句をつける人はいなかったけれど、心の内ではどう思っているのだろう。
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