第22章 邂逅
ガラの悪い兄でいくらかこういった容姿の人間に耐性があるとはいえ、やはり大柄な男性に見下ろされてその上睨み付けられるのは少し怖い。
黙ったまま何も言わないその人物としばらくにらめっこが続いた。少しして、後ろからひょっこりと、また大柄な人物が顔をのぞかせた。
「青根、何やってんの?」
「……」
青根、と呼ばれた三白眼の人物は、声をかけてきた人物の方に視線をやるも、やはり無言のままだった。
ジャージの柄からして、同じ学校の人間だろう。なのにコミュニケーションが取れている感じがしなくて、首をかしげてしまう。
「あっ、私が不注意でぶつかってしまって。申し訳ありませんでした」
青根さんの後ろの人物にも状況を説明するのも兼ねて、私は再度青根さんに謝罪の言葉を述べる。
それで納得したのか、青根さんの後ろの人物は「あー、なるほど」と頷いていた。
「あれっ、ていうか君さ、烏野のマネージャー? だよね?」
「はい、そうですけど……」
「えー何だよー……烏野には二人も可愛いマネがいるのかよ……ちくしょう、これだから普通科の学校はなぁ」
綺麗に整えられた細い眉が、いびつな形に変わった。七三に分けられた茶色の前髪がさらりとその眉にかかる。その前髪を撫でつけて、目の前の男子生徒は、はぁと深いため息をついた。
けれど次の瞬間には、その表情は一変して明るいものに変わった。
「あっ、ねぇねぇ、名前教えてよ! 連絡先も!」
いきなりそんなことを言われたものだから、驚きのあまり私は固まってしまった。
「あー、まずは自分から名乗らないといけねぇよな。俺は二口。二口堅治。伊達工の二年。君は?」
唐突に始まった自己紹介にあっけにとられてしまう。『伊達工』という言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡る。
伊達工。旭先輩が、バレーを離れるきっかけを作った、あの学校だ。
じゃあこの人達が、旭先輩のスパイクをことごとくブロックしたのだろうか。よりにもよって因縁のある相手に、ナンパされるなんて一体どういうことだろう。
私の複雑な気持ちは自然と顔に出てしまったようで、それを見た青根さんが二口さんの肩をむんずと掴んだ。
「痛っ! なんだよ青根」
「……(ふるふる)」
「いいじゃんか、出会い求めたってよぉ」
「……(ふるふる)」