第22章 邂逅
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「着いたー!!」
バスから飛び降りるなり、日向は外の空気を味わうようかのように、大きく伸びをしてめいっぱいに空気を吸い込んだ。
どうやら今日は酔うことなく済んだようで、私はホッとした面持ちで日向の様子を車内から眺める。
部員が全員降りると、私と潔子先輩は車内に忘れ物が無いか確認して回った。確認し終えてバスを降りると、黒いジャージの集団がちらりとこちらを振り返る。
「清水、黒崎、忘れ物無かったか?」
「うん、大丈夫」
澤村先輩と潔子先輩のやり取りに、私も潔子先輩の横でこくこくと頷いて参加する。
よし、と呟いて澤村先輩は皆に会場へ向かうように告げた。
先輩の後に黒いジャージがぞろぞろと、形の崩れた列をなして続いていく。
体育館の入り口に張り出されたトーナメント表を確認しようと、皆がそこで足を止めた時だった。
先にトーナメント表を確認していた『大岬高校』のバレー部員の口から、聞き捨てならない言葉が飛び出した。
「烏野ねぇ。昔は強かったらしいけどな。今はなんかダサい異名ついてんだよ。確か、“落ちた強豪、飛べない烏”ってやつ」
大岬高校の文字が掲げられたジャージの背中に、烏野バレー部員達の視線が注がれているのが、気配で分かる。
皆の後ろに立っている私からは、その表情までは見えなかったけれど、笑顔でないことは想像に難くなかった。
「飛べない? 何ですって?? ん?」
田中先輩が『異名』を口にした学生に真顔で絡んでいった。すぐさま澤村先輩が謝罪をして田中先輩を回収したものの、皆気持ちは田中先輩と同じだったと思う。
私でさえ、不名誉な異名をあんな風に笑いながら口にされているのを目の当たりにして気分が悪かったのだから、部員達はもっと嫌な気分になったに違いない。
憤慨しながら歩みを進めていると、今度は別の高校の生徒から、また聞き捨てならない言葉が飛び出した。
「あ、あれは……! まさか?! 烏野の、“アズマネ”!!」
「え? 何、誰?」
「北高の奴を手下使ってボコらしてたとか、路上でなんかヤバいもん売りつけてたとか、おっかねぇ話ばっかり聞くんだよ……あと五年留年してるらしいぞ」
「え?! マジで?! それって成人じゃん!」