第22章 邂逅
潔子先輩より濃い時間はどうかは分からないけれど、でも先輩の言う通り、この二ヶ月は充実した時間を過ごせている。
「……確かに、濃い二ヶ月を過ごしてきたと思います」
この二ヶ月を噛みしめるようにそう言うと、潔子先輩は優しく笑って頷いてくれた。
「私達はお互い違う人間だから、自分にない物をお互いが持ってる。……それが羨ましく見えて当たり前なのかもしれないね。自分には持てないと思うものなら、尚更」
「そうですね……」
「でも、それでいいのかもしれない。違うタイプの私達だからこそ、見えるものも違うし、考えることも違う。それって色んな視点で部員のことを見られるってことだから……」
「色んな、視点ですか?」
「そう。多角的な視点で部員をサポートすることが出来れば、みんなの士気も、能力も高めてあげられるんじゃないかな」
私はやっぱりいつまでも、潔子先輩には敵わないと思う。
自分に無いものを持つ相手を羨ましがるだけじゃなくって、そこから一歩進んで物事を考えるなんて、私には出来そうになかったから。
たった二つしか違わないのに、こんなに考えていることが違うなんて、それは年齢のせいじゃなくて、絶対に個人の性格によるものだと思う。
隣で微笑む潔子先輩は、私の中で目指すべき理想の女性像になっていた。容姿はどうしようもないにしても、その立ち居振る舞いは真似することが出来るはずだ。
「やっぱり、先輩はすごいですね」
二度目の「すごい」に潔子先輩はまた目を丸くしている。
先ほどと違うのは、そう発言した私の心持ち。
さっきみたいに先輩を羨んで出た言葉じゃない。今は心から先輩を尊敬する言葉として、口をついて出てきた。
それが潔子先輩にも伝わったのか、丸くなった目は私の顔を見ると細くなって綺麗な笑顔に変わっていったのだった。