• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第22章 邂逅


「あれは、私もびっくりした……。でも、みんながあんな反応するほど、普段私は自分の気持ち口にしてなかったんだな、って考えさせられた」
「そんなこと……」
「美咲ちゃんが羨ましい。美咲ちゃんみたいにみんなと笑顔で接することが出来たらいいのにな、って思う事がよくあるの。……そういうの、私苦手だから余計に」

 私と話す時の潔子先輩はいたって普通に笑顔を見せてくれる。だから意識したことは無かったけれど、言われてみれば部員と接する時には少し表情が硬くなるかもしれない。
私はそれが特に問題とは思わなかったけれど、潔子先輩はそれなりに悩んでいたようだった。
そんな風に潔子先輩が思っているとは思わなかったから、少し意外だった。

「ごめん、変な話になっちゃった」
「いえ……。潔子先輩がそんな風に悩んでるなんて知らなかったです」

 恥ずかしそうに俯く潔子先輩に、励ますように言葉をかける。
そんなに思い悩むことない、とつい思ってしまうけれど。こういうことは本人にとって深刻な悩みだったりするものだ。
あまり迂闊なことは言えない。

「……私は、潔子先輩が羨ましいです。先輩は、二、三年生と積み重ねてきた時間があります。それは私にはどうやって得ることは出来ないですから」

 本当はそれだけじゃない。潔子先輩みたいに一言でみんなの気持ちを揺り動かせるような存在になりたい、とも思ってる。でもそれは、さっきももう言ってしまったから。堂々巡りになってしまう気がしてそれは言わなかった。

「時間、か……。それは確かに、努力ではどうにもならないことかもしれないね」
「はい」
「……でも、美咲ちゃんは私以上に濃い時間を過ごせてるんじゃないかな……?」

 潔子先輩の問いかけに、私はこの約二ヶ月近くのことを振り返ってみた。

 潔子先輩から受け取った一枚のビラに導かれるように始まった、私の高校生活。
バレーのルールも知らなかったけれど、旭先輩のスパイクに感動して引き込まれるようにして入部を決めた四月。
初めての合宿で旭先輩と急接近した五月。
幼馴染との思いがけない再会。

 烏野に入学してからの二ヶ月は、今まで生きてきた中で一番濃い思い出が詰まっている。
引っ越しを繰り返してきた私の人生の中で、ここまで積極的に外の世界と関わろうと思ったことは、今まで無かったように思う。
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp