第21章 精一杯のエール
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「じゃーなー!」
「明日な!」
一人、また一人と別れを告げて、私と旭先輩の二人きりになった帰り道。
先ほどの円陣を組んだ時のことが思い出されて、少し気恥ずかしくなってしまう。
横の旭先輩は、手にしたストラップをしげしげと眺めて、ふいにこちらを見やった。
「黒崎、ありがとうな。俺、このお守り大事にする」
「そんなに喜んでもらえて、作った甲斐がありました」
「喜ぶよ!喜ぶに決まってる!!」
急に旭先輩が大きな声を出すものだから、びっくりしてしまった。旭先輩も思わずそんな大きな声が出たのか、小さくごめんと謝って、少しボリュームを落として話を続けた。
「……だってこれすごい手間かかったろ?ここの刺繍なんかすごく大変そうだし」
旭先輩が指差した先には、ストラップ作りで一番苦労した『飛べ』の文字。最初はフェルトで作ってしまおうかと思っていたけれど、小さくフェルトを切るのも大変で、ならばいっそ刺繍してしまおうと潔子先輩と決めたのだけれど……。
ミシンではなく、手で一針一針縫っていったので、かなりの時間がかかった。途中で、頑張ってフェルトを切った方がマシだったかもしれないね、と潔子先輩と二人で苦笑いしていた。
「そこは確かに大変でした!毎日潔子先輩の家で二人で一生懸命やったんですけど。時間かかって出来上がったのついこの間ですもん」
「毎日、清水の家で……?あっ、そっか……そうだったんだ……」
「?」
旭先輩が何か腑に落ちたように頷いて、そして深いため息を一つ。次に聞こえてきたのは「よかったぁぁ」という安堵の声だった。
「?何が良かったんですか?」
「え、あ…。いや、ほら、最近黒崎すぐに帰っちゃってただろ?……俺がこの間黒崎に嫌な態度取っちゃったから、俺と帰るの避けてるのかな、って思ってたんだ。…そうじゃなかったんだな、って今ちょっとホッとして」
旭先輩の顔は本当に安心した顔をしていて。私は思いもよらなかった言葉に驚いていた。
「そんな風に思ってたんですか?!」
「う、うん……だって黒崎黙って帰っちゃってたから。あ、いや、別に俺に断りを入れて帰れってワケじゃないけどさ!……それまでずっと一緒に帰るのが当たり前だったから、なんかほら……」