第2章 旭先輩
「みんなして、ひどい……」
大きな体がみるみるうちに萎んで、旭先輩の口はへの字になった。
心なしかうっすらと涙目になっているような気がして、可哀想に思ってしまう。
「もう、そんな姿見せたら幻滅されるぞー、旭」
「うっ…分かってるよぉ」
情けない声で答える旭先輩だったけれど、私はその姿を見ても幻滅することはなかった。
きっと先輩は優しさの塊だから。
言い返すことはしないで、全部受け止めてしまうのだろう。
「ごめんね、こんな先輩達で」
清水先輩が笑ってそう言う。
一括りにされた澤村先輩と菅原先輩が「俺達も?!」と声をあげた。
「いえ…逆に、嬉しいです。普段の先輩達の姿を垣間見れた気がして。今日会ったばかりの私に、そんな風に接してくださって」
飾らない先輩達の言動が、素直に嬉しかった。
素のままの先輩達の姿を見ていると、彼らの中に私をちゃんと受け入れてくれた気がしたから。
「黒崎さん…なんていい子なんだ…」
ううっ、と旭先輩が涙ぐんでいる。
そんな先輩の姿にまた菅原先輩と澤村先輩が突っ込みをいれた。
思い悩んでいた先ほどまでの気持ちは、今では晴れ晴れとしたものに変わっていた。
明日からは、先輩達と一緒に。
あの熱く濃い時間をともに過ごしていく。
明日から始まる新しい生活への一歩を、私はようやく踏み出したのだった。