第21章 精一杯のエール
私が小さく頷くと、わいわい賑やかになっている部員達を澤村先輩が静かにさせてくれた。
しんと静まった体育館。視線がまた一気に自分に集中するのを感じて、喉がからからになっていく。上手い事を言える自信なんて無い。
けれど潔子先輩みたいに一言だけで、みんなの気持ちを揺り動かせるほどの力もない。勇気を振り絞って、自分の想いを素直に口にするしか選択肢は無かった。
「…私は…私達は…みなさんと一緒にコートの中で戦うことは出来ません」
胸のうちを絞り出すように、一言一言に力をこめる。
音駒との練習試合からこっち、ずっと思ってきたこと。みんなの力になりたいと思えば思うほど、自分に出来ることの限界を感じて、苦しかった。
何が彼らの力になるのか、どうすればいいのか、ずっと悩んでいる。
「…でも。心はずっと、みなさんのそばにあります!私達は、みなさんの一番の応援団です!」
ともに戦うことが出来ないのなら、出来ることは一つしかない。寄り添う心を、彼らに示すこと。それしか今の私には出来ることはなかった。
言い終わっても、体育館は静まり返ったままで。少し芝居がかった言い方すぎたかな、と恥ずかしくなった。恥ずかしくて目を伏せてしまったけれど、あまりに反応がないものだから、ちらと目だけでみんなの顔を確認する。
「……っ!!黒崎…!!」
旭先輩が、またわっと声をあげて泣き出した。泣きながら膝から崩れ落ちて、床にしゃがみこんでしまっている。そんな旭先輩の肩をたたいている菅原先輩も、泣き笑いの顔だ。
「お前なぁ、泣かせるなよ…!」
「今日は、涙腺が崩壊しそう」
澤村先輩や田中先輩、西谷先輩までも、ぐっと涙をこらえているようで、自分の言葉が人の心を動かせたことを知る。
素直に伝えた私の気持ちがみんなに伝わったのだと、嬉しくなった。
「…おし、明日に向けていっちょ気合いれるか!」
「円陣組むべ!」
澤村先輩と菅原先輩が音頭を取って、部員達がわらわらと集まりだす。まだ床に座り込んでわんわん泣いている旭先輩を菅原先輩が無理やり立たせる。
なんとか立ち上がった旭先輩は、赤い目をして唇を噛みしめたまま、ゆっくりと私の方を向いた。
「清水と黒崎も一緒に!」
まだ頬に涙の粒を残したまま、旭先輩はにかっと笑う。