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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第20章 ふたりきりの時間


「心配すんな。俺に任せとけって」
「スガ……。たまにお前がこわいよ…」

 考えを見透かすように発言する菅原に、東峰は感謝の念を抱きつつも、そのあまりの察しの良さに恐ろしさも感じていた。

「誉め言葉として受け取っておくわ」
「あ、ああ、うん……」

 菅原は東峰との会話を終えると、他の部員達に声をかけ始めた。

「今日は大地がラーメン奢ってくれるって~」
「ちょっと待て、スガ!なんだそ「ラーメン行く人ー???」

 澤村の言葉をさえぎって、菅原は後輩達に挙手させて、人数の確認を始める。

「マジっすか!!俺、行きます!!」
「俺も俺も!!」

 菅原の声掛けに、わっと湧き上がる後輩たちの姿を見て、菅原の手の平の上ですっかり踊らされている彼らに、そしてなにより勝手におごらされることになった澤村に、東峰は同情をした。

「いや、待て、肉まんならまだしも、ラーメンは破産する!」
「んじゃファミレス行くべ!」
「ファミレスでも同じだ!!」
「俺も出すからさぁ~」
「スガさん太っ腹!!」
「あざーす!!」

 嫌がる澤村を押し切る形で、菅原は後輩たちを連れて部室を出て行った。去り際に、東峰にウインクをとばして。
一気に静かになった部室に取り残された東峰は、菅原に感謝しながら手早く着替えを済ませた。

 せっかくチャンスを作ってくれた菅原の気持ちを無駄にしたくはない。黒崎が帰ってしまう前に、彼女に声をかけなければ、と東峰は焦った。

 足早に部室を飛び出して、黒崎の姿を探す。
一緒に帰ろう、なんて約束はしていないから、気持ちは焦ってばかりだ。
闇雲に探したって、見つかるはずはないのにあてもなく黒崎の姿を探してさまよった。

 今まで、どうしていたっけ。ほんの少し前まで、こんなにあれこれ考えずに普通に一緒に帰っていたのに。
東峰がそんなことをふと思った時、後ろから声がした。

「……何、してるんですか?」

 声に振り返れば、探し求めていた人物がそこにいて。
はぁぁと深いため息とともに、東峰の顔は一気に緩んだ。

「よかったぁぁ~。黒崎もう帰っちゃったかと思った」
「えっ、私を探してたんですか?」

 黒崎は自分が探されているとは思ってもみなかったようで、驚いた顔で東峰を見ていた。
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