第19章 その男、シスコンにつき。
「無事解放されて良かったな、旭」
「あ、うん……でも意外と悪い人じゃなかった」
「そうなのか?…そんな風には見えなかったけどな」
黒崎の兄が東峰に掴みかかっていた場面を思い起こして、澤村は首をひねる。
「よしあき、って言うんだって。義理人情の『義』に、公明正大の『明』で、義明。わざわざ自分でそう説明してくれたんだ」
「へぇ。意外……でもないのか?『夜露死苦』のノリで覚えたのかな、四字熟語……」
菅原がそう思うのも無理はなかった。義明の見てくれは誰がどう見ても、夜中にバイクを爆音で鳴らしていそうな、そんな人間に見えるのだ。
けれど義明に妙な親近感を覚えた東峰は、そんな菅原の言葉をたしなめた。
「スガ、見た目で人を判断するのはよくないよ。…義明くんもそれで苦労してんだから」
「お、おう、スマン……なんか、仲良くなれて良かったな?」
「そうだな」
見た目と中身のギャップのある者同士、通じ合った黒崎の兄と東峰は、周りの者にはよく分からない絆で繋がったのだった。