第2章 旭先輩
ニッと笑う清水先輩につられて私も笑い返した。
先輩たちが両腕を大きく広げて、私が飛び込んでくるのを待っているような気がした。
ここは私も覚悟を決めて、一歩踏み出してみなければ。
「……マネージャー、やりたいです!」
その一言を言うのに、どれだけ勇気を振り絞っただろう。
私が頑張って絞りだした言葉を、先輩たちは満面の笑みで受け止めてくれた。
「これから、よろしく!!」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
吹っ切れた私の顔を見て、満足そうに先輩達は頷いていた。
「…よかったぁぁぁ~…」
ふぅぅと大きな安堵のため息とともに、旭先輩が口を開く。
「どうした?旭」
怪訝な顔で澤村先輩が旭先輩を見る。
立派な眉をこれでもかというくらい下げて、旭先輩が震え声で話を続けた。
「いや、だってさぁ…俺黒崎さんにケガさせちゃったし、俺がいるから入部迷ってんのかなぁって思ってて……そうじゃなくて良かった……」
「お前、ほんとガラスのハートな」
深刻そうな旭先輩をよそに、澤村先輩と菅原先輩は呆れた顔で笑っていた。
旭先輩はどこまでも気にしいで優しい人なのだと改めて思った。
先輩達はそんな旭先輩に慣れっこなのだろうが、私からするとなんとかフォローしてあげたいというか守ってあげたいというか、そんな気持ちにさせられていた。
「む、むしろ、旭先輩がいたから、マネージャーやろうって思ったんですよ!」
「えっ?」
予期せぬ言葉に驚いたのか、旭先輩はそのまま固まってしまった。理解が追い付かない様子でフリーズしている。
「旭がいたから?どういうこと?」
動かなくなってしまった旭先輩の代わりに、菅原先輩が尋ねてくる。
勢いで言葉を放ってしまう自分の悪い癖を恨みながら、なるだけ変な誤解をされないように慎重に言葉を選んだ。
「え、っと……旭先輩のスパイクを見て、一気に引き込まれたんです。そこからバレーに俄然興味が沸きました」
「へぇー!だってさ、旭。よかったなぁ。男冥利に尽きるなぁ?」
にやにやしながら菅原先輩が旭先輩の背中を叩く。
フリーズしたままだった旭先輩はうぇっと変な声を出しながら、恥ずかしそうに後頭部をかいた。
「あ、その、変な意味ではなくてですね?!」
菅原先輩の言動を見ていると、どうも誤解されているような
気がして慌てて言葉を続けた。