• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第19章 その男、シスコンにつき。


「…うちは、色々と特殊な家だ。……少しはあいつから聞いてるんだろ?家のこと」
「あ……はい。本当に少し、ですけど」

 東峰の頭に、合宿のあの夜のことが思い浮かぶ。
母親の恋愛に振り回されて育ってきたことは、彼女の電話のやり取りでなんとなく東峰も察していた。

「お袋がめちゃくちゃでよ。いい年して惚れた腫れただので、あちこち引っ越しすんだよ。慣れてきた頃にまた引っ越し、の繰り返しでよ。
……だから、妹は居場所を作る事に消極的だった。今まではな。
どうせ引っ越すんだから、ってどこか冷めた感じだった。
表面上は友達作ってうまくやってたけどな……でもどこ行っても当たり障りなく生きてる感じがしてた」

「それがよ、高校入ったらよ。マネージャーやるんだって言い出してよ。あいつが何かに所属したがるなんて、初めてのことで……何があったのか、何があいつを変えたのか、知りたかった」

 兄の目は途端に鋭くなり、東峰に向かって一心に視線を注ぐ。その視線に東峰は思わず身じろいだ。

「……あいつが姉貴と学校の話をしている時、お前の名前がよく出てくんだ。…どんな奴か気になった、だからお前を探した」

 とても乱暴な方法ではあったが、この間の件はこの兄なりの妹の事を思っての行動だったのだと、東峰は理解した。
特殊な環境で育ってきた彼らだからこそ、互いを思う気持ちは普通の兄妹より強いのかもしれない。

「妹は、お前に会って変わった」

 兄は真っ直ぐに、東峰に言葉を放つ。
黒崎を変えた、などと言われても東峰にはその実感はなかった。
特別何かした覚えはない。ただ普通に、先輩後輩として、マネージャーと部員として、接してきただけだ。

「……まぁお前には分からねぇかもしれねぇが。……あいつにとってお前は特別なんだろうな。理由は……考えたくもねぇけど」

 ちっ、と舌打ちをされて、東峰の体は条件反射のようにビクッとなった。
そんな東峰に兄は「別に殴らねぇよ」と吐き捨てるように言う。
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp