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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第18章 嵐を呼ぶ男


 しかし、男の怒声が脳内をぐるりと一周すると、その違和感に菅原達は眉をしかめた。

「……妹?」

 菅原の小さなつぶやきを無視して、男は東峰に食ってかかる。

「うちの妹に手ェ出すってのがどういう事か、体に教えてやるよ」

 男は東峰には若干届かなかったが、それでも180センチ近くありそうな大柄な男だ。
東峰よりかは細身な体躯ではあるが、パワーはそれなりにあるらしい。
シャツの首元をすごい力で掴まれ、東峰の体が地面から浮き上がりそうになる。

「ちょ、ちょっと待ってください、一体なんの事ですか…?!」
「ハァ?!おい、テメェ知らばっくれんな!!」

 男の指す妹が誰の事なのか理解の追い付かない東峰の態度に、白を切るつもりだと思い込んだ男は殴りかかった。
後方に思いっきり引かれた拳が、東峰の頬をめがけて一直線に空を切り裂いた。

 殴られる。
衝撃にそなえて本能が東峰の目をぎゅっと閉じさせた。
次の瞬間には、ぱぁんと乾いた音が東峰の耳に届く。

 しかし、いつまで経っても東峰は頬の痛みを感じなかった。
不思議に思っておそるおそる目を開けると。
自分に掴みかかっていたはずの男がお腹を押さえて、その場に倒れこんでいくのが見えた。

「…??!」

 何が起こったのか、理解できずに何度かまばたきをする。
菅原と澤村の二人も東峰と同じだったようで、地面に倒れこんだ男をぼうっと見つめている。

 しばらく男を見つめていた東峰だったが、うずくまる男と自分の間に、人影がある事にようやく意識がいった。
見慣れたその後ろ姿の人物は、綺麗にあげた片足をゆっくりと地面につけた。
ひらりとスカートを舞わせて振り返ったその人物は、東峰と目が合うと勢いよく頭を下げた。

「うちの兄がご迷惑おかけしました!!」
「…っ、黒崎…?!えっ、あ、兄って……?!?」

 予想だししなかった展開に、東峰達は驚きの声をあげるしかなかった。
金髪の男が、黒崎の兄で、その兄が東峰に絡んで、そしてその兄を黒崎がノックアウトして……?!
最後の方は三人とも、もう理解不能の域に達していた。

 あの可愛らしい黒崎が。
身内とはいえ、大柄な男を一撃で沈めてしまった。

 嘘みたいな話だが、目の前で起きたことに、三人ともそれが事実だと受け入れるほかなかった。
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