第18章 嵐を呼ぶ男
校門に三人が差し掛かった時、門の影からゆらりと一人の人物が姿を現した。
暗闇に浮かぶ明るい金髪に、三人は思わず息をのんだ。
オールバックの輝く金髪に、左目の下には大きな傷跡がくっきりと浮かび上がっている。
そして三白眼の目がギラリと光って、三人をねめつけている。
光沢のある生地がテラテラと光るスカジャンを着た金髪の男は、固まってしまった三人の元に無言でずんずんと近寄ってくる。
三人の頭の中は同じことを考えていた。
この今にも噛みついてきそうな金髪の男は。
今日やたらと噂になっていた、旭を探しているというその男に違いない、と。
三人とも、武術の心得は無い。ましてや金髪の男が刃物など持っていようものなら、太刀打ちなんて出来ない。
どう動くのが正解なのか、脳がはじきだせないまま、金髪の男は三人の目の前まで詰め寄った。
「……東峰旭ってのは、どいつだ」
ドスの利いた声で、金髪の男が言う。
東峰でなくとも震えあがりそうな男の気迫に、三人はうんともすんとも言えずにいた。
「おい、黙ってねぇでなんとか言え。お前らのうちの、誰かなんだろ」
何故か確信を持って、男は三人を順番に睨み付ける。
男の遥か後方に、走り去っていく烏野の生徒の姿が澤村の目に入った。
もしかしたら、あの生徒が旭のことを教えたのかもしれない。
しかし身の危険を感じただろうその生徒のことを思えば、責めることなど出来ない。
「チッ。だんまりかよ。いいぜ、じゃあ鞄貸せ。名前くらい、書いてあんだろ」
男は乱暴に菅原の鞄を奪い取った。
ジッパーが壊れそうな勢いで鞄を開けて、中に書かれた菅原の名を確認して、鞄を菅原に突っ返した。
その横にいたのは澤村だ。
男がまた乱暴に澤村の鞄を取り上げようとした時だった。
「お、俺です」
東峰が、澤村の前にずいっと身を乗り出した。
そんな行動を取るとは思っていなかった澤村と菅原はただただ驚いて東峰の背中を見つめるしかできない。
「俺が、東峰旭です」
殺されるかもしれない。
瞬間的に東峰がそう感じたくらいに、金髪の男の眉と目はつりあがった。
これ以上ないほどの憎しみをこめた視線を、東峰は内心冷や汗をかきながらも真正面から受け止めた。
「…っ、お前か!!お前がうちの妹をたぶらかしてんだな?!?」
物凄い剣幕で怒鳴る男に、三人は思わず目をつぶった。