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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第18章 嵐を呼ぶ男



「旭、お前とうとう本当にやっちまったのか?」

 朝練を終えて教室に入るなり、そう声をかけてきたクラスメイトに東峰旭はただ目をぱちくりとさせるしかなかった。
何のことだかさっぱり分からないといった風の東峰に、クラスメイトはなおも続ける。

「昨日さ、お前のこと探してるって奴に絡まれたんだよ。すっげー怖かったぜ!金髪オールバックで、目の下にデッケェ傷跡あってさ。超目つき悪ィの。お前、なんか身に覚えない?」
「何それ…?!そんな人知らないよ、俺…」

 東峰の返答に、クラスメイトは本当か?とまだ疑いの目で彼を見つめている。けれどいくら疑いの眼差しを向けられようとも、当の東峰には全く心当たりは無かった。

「いや、本当に知らないって」
「…そっか…。でもそいつハッキリ言ってたんだよ。『東峰旭を知ってるか』って」
「ええっ……」
 
 自分の名を、あらぬ噂を伴ってあちこちで囁かれることは、今までもあった。
しかし名指しで探されるなど、東峰には今まで経験のないことであった。
 
「あ、でもお前の事は知らないって言っておいたぞ?!…誰か分かんねぇけど、気をつけろよ」
「お、おう。分かった」

 荷物を教室の後ろの棚にしまいながら、東峰の頭の中は身に覚えのない不良の姿がぐるぐるしていた。
自分を探しているって、どういうことだろう??
一体どこの誰なのだろう??
何の目的があって探しているのだろう??

 不明な点ばかりで、いくら考えても東峰の不安はぬぐえなかった。それ以上に身の危険に不安を覚えるばかりで、授業中もどこか落ち着かない東峰だった。

 放課後、東峰の教室の入り口に小さな影が一つ現れた。東峰が部に復帰してからというもの、また彼が逃げ出さないよう監視するかのように西谷が毎日迎えに来るのだ。

「旭さん!部活行きますよ!」

 小柄な後輩に引っ張られていく大柄な東峰の姿に、最近毎日のように目にしている光景とはいえ、クラスメイト達はそのアンバランスさに笑いをこらえきれない様子だった。

「ホント、見た目とのギャップ凄いよな、旭ってさ」
「初めて見た時は絶対悪い奴だと思ったもん俺」
「分かる!デカいし髭生えてっし長髪だし、チャラ男だと思ったわー」
「一年の時はもちっと可愛げあったんだぜ旭。今よりかは」
「マジで?!…いやぁ俺想像つかねぇわ。ずっとあの髭と長髪のイメージ」
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