第17章 菅原先生の恋愛指南
「大体さぁ、俺だって美咲ちゃんって呼んでるんだぜ?あんまり深く考えずに呼んじゃえばいいのに」
「それはお前…ほら、名前で呼んでもいいキャラの奴っているだろ?田中とか西谷とかもそうだけど、名前で呼んでも許される雰囲気あるやつ。スガはそういうタイプだから許されるんだよ。俺はなんか違う気がする……」
「はー…旭お前ほんと女々しいやつだなー…」
「自覚はしてるから、言葉にしないで……」
先ほどの衝撃の出来事に半分意識がとんでいた道宮であったが、菅原と東峰の会話に現実に引き戻された。
美咲ちゃん。道宮も聞いたことのある名前だった。
道宮の頭の中に一人の女子生徒の姿が思い浮かぶ。
この間の合宿の時に、一緒に恋バナで盛り上がった、あの彼女だ。
彼女はあの時、東峰のことを好きだと話していた。
今菅原達が話している美咲ちゃんが、あの美咲ちゃんだとしたら。
二人は両想いだということになる。
その事に気が付いた道宮は、まるで自分の事のように嬉しくなった。
ともに頑張ろうと励まし合ったあの子が、目の前の東峰と両想い。
その事実は、道宮の恋路も応援しているように思えて、不思議と力が湧いてくるのだった。
「なんだか分からないけど、力になれたのなら良かった」
「おう、ありがとな道宮」
「こちらこそ」
菅原に礼を言う道宮を澤村は不思議そうな顔で見ていた。何故彼女が菅原に礼を言うのか、その理由に澤村が気付くのはもっとずっと先のこと。
いつか自分の恋も実ればいいなぁと、道宮は一人心の中で願ったのだった。